ユンファ

STAR WARS エピソードI/ファントム・メナス 3Dのユンファのレビュー・感想・評価

4.8
ディズニーの所為(おかげ?)で頓挫したスター・ウォーズ総3D化計画第一弾。
公開当時は、また映画館でスター・ウォーズを観られる喜びで飛び上がったものの、肝心の3D効果は微妙だった。日劇前夜祭で鑑賞した際は、上映開始直前に前の席にベイダーのコスプレイヤーがやって来て、「な、何も見えねえ…だが、ある意味3Dだぜ…」となったのをよく覚えている。

最近、ウクライナのことを知るためにデ・シーカの「ひまわり」を観るのが流行っているらしいが、それならむしろ「ファントム・メナス」を観るべきである。と言ってもウクライナを知るためではなく、繰り返される人間の恥ずべき行いを知るためだ。

共和国と関税率で揉めた通商連合は、簡単に制圧出来そうな自然豊かな惑星ナブーを包囲。何かしら対応せざるを得ない共和国は、とりあえずジェダイ(クワイ=ガンとオビ=ワン)を特使として派遣する。ところが通商連合は、特使のジェダイを問答無用で毒ガス攻撃。交渉どころでないジェダイはナブーへ逃げ込み、同時に通商連合がナブーへの武力侵攻を開始する。
この冒頭からして、どれだけスター・ウォーズのストーリーが近現代の世界情勢を反映したものか、お分かりいただけるだろう。武力侵攻は常に待ったなしであり、話し合いによる解決などあり得ない。夕日が沈むのを止められないように、誰にも制御出来ないのだ。

クワイ=ガンは奴隷の少年アナキンと出会い、その並外れたフォースの強さに驚く。クワイ=ガンはアナキンを解放するが、母親を自由にすることは出来なかった。
奴隷制度は違法だが、タトゥイーンのようなクソ田舎では平然と罷り通っており、国際的なルールの無意味さが強調される。ジェダイのような力を持つ者であっても、なす術はない。こうした世の不条理は、後にアナキンが暗黒面に堕ちる一因となる。が、その一方で、同じく世界を縛るシステムと戦うパドメと心を通わせ愛し合うきっかけにもなる。

コルサントに到着したアミダラは共和国に助けを求めるも、議会は全く機能しておらず、ついにナブーを救うため自ら戦うことを決意する。
これは民主主義の弱点をついたパルパティーンの巧妙な作戦なのだが、ナブーを救うために立ち上がろうとする人間が一人もいないことは事実であり、それは彼女を失望させるに十分だった。

ナブーに戻ったパドメは、原住民グンガンと手を結ぶ。
分断されていたナブー人とグンガン人が、共通の敵に立ち向かうため、ついに手を組む場面は感動的だ。

圧倒的兵力差を埋めるため、自ら敵の中心に飛び込み、ガンレイ総督を拘束する作戦を提案するパドメ。戦闘が避けられない状況にあってなお、被害を最小限に抑えようとする姿勢が素晴らしい。

始まる総力戦。ナブー人、グンガン人、ジェダイ、そしてアナキン。力を合わせ脅威に立ち向かい、ついに勝利を手にする。
強大な悪に立ち向かう唯一の方法は、団結し協力すること。

スター・ウォーズがシリーズを通して描くのは、光と闇、正義と悪の対立。暗黒面は誰もが持っており、どんな善人も些細なきっかけで悪人になり得る。だが、救いの手は常にある。地平線の彼方ではなく、おそらく半径数メートル以内に。
スター・ウォーズは、そういう物語である。闇の帳が降りた世界で、ほんの小さな光を絶やさないために戦う人々の物語である。決して終わることのない絶望と希望の物語である。
だからオレは世界に絶望しかけた時(ほぼ毎日だが)、スター・ウォーズを観る。

今こそ、もう一度スター・ウォーズを観て、自分に何が出来るかを考える時だ。
「ひまわり」を観るのは、その後でいい。
でも、「ひまわり」も観ろ。名作だ。
スター・ウォーズほどじゃないが。
ユンファ

ユンファ