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夢二のKのレビュー・感想・評価

夢二(1991年製作の映画)
5.0
大正浪漫三部作でこれだけまだちゃんと観られてなかった。何年か前に「夢二だー!」の辺りで寝落ちてしまったので。だからほぼ初見みたいな感じだったけど何故か「天ぷらそばは天ぷらだけ先に食ってそれで酒一合飲んでからそばを食うんだ」っていうセリフだけ覚えていて、変に懐かしくなった。どうということは無い冗談だけど、夢二の人間性を分かりやすく示している言葉でもあるような気がする、と思い入れのせいで少し思ったりした。序盤はホラー風味、原田芳雄が暴れ出してからはコミカル、終盤は幻想小説。演劇的エスカレートを見せる物語にどんどん引き込まれていって、最後には絵の中に連れて行かれてしまったかのような、彼岸と此岸の境をいつの間にか越えていたことに気付かされるような感覚に陥る。そうして知らぬうちに観客は皆「名無し」に成り果てるのだ。牛の血が浮かぶ池を泳いで復活する時まで。
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