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地獄のblacknessfallのレビュー・感想・評価

地獄(1999年製作の映画)
3.4
地獄と言えば石井輝男監督のこれもあったなと思い再鑑賞。

石井輝男監督と言えば一部の人達には言わずと知れたエロ・グロ猟奇王なんで地獄とは取り合わせがいいよね。

そんな石井輝男監督の作家性が映し出された地獄はグロとゴアがいっぱい笑
中川信夫監督の地獄と同じ昔ながらの地獄をストレートに映像化してるのは同じなんだけど、こっちはもっと即物的な感覚を重視した責苦の痛み苦しみを全面に打ち出してる。イーライ・ロス監督の『ホステル』とかの所謂トーチャーポルノに近い感触。

責苦を受けるのは幼女連続殺人犯の宮崎勤、毒入りカレー事件の林真須美、そしてオウムの麻原彰晃、80年代末から90年代中期の凶悪犯達。
各々の事件の再現の後に地獄の拷問ショーが待ってるシンプルな構成。

石井輝男監督らしい何ともいい感じに陰惨でありながら見世物性も高いエロ・グロ・ゴア映画なんだけど、低予算なのか地獄のヴィジュアル、責苦のゴア・エフェクトがかなりショボくて雑。センスで補ってはいるけどここまでクオリティが低いと物悲しくなってくる、、笑
出てる役者の学生映画レベルの拙い演技もさらに物悲しさに拍車をかけてる。

石井輝男監督はその苛烈で冷たい性格から周りのスタッフや俳優、プロデューサーが彼の元から離れ、彼をリスペクトする弱小プロダクションや若手としか映画が作れない状況だったと何かで読んだ記憶があるけど、この映画はまさにそれを裏づけるものと言える笑
70年代に撮ってたら『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』ぐらいの傑作になっていたんじゃないかと思うと、本当に切ない気持ちなる。
難しいな、苛烈で冷たいからこそ、あの人を人と思わぬようなエグい演出や猟奇性、残酷さを画面に映し出すことができたとも言えるわけで。

映画から石井輝男監督の寂しさが滲み出てるように見えるんだよな。
でも、そんな中、エログロ時代劇の傑作『ポルノ時代劇 忘八武士道』の丹波哲郎さんが忘八武士道のキャラで出てくる。
あまり必然性はなく唐突なんだけど、石井輝男監督と関係を絶ってない人がいるんだと思えて暖かい気持ちになれた笑

石井輝男監督の作品の中ではダメな方だと思うんだけど、オウム事件から5年しか経ってない1999年にオウム事件を正面から取り上げ、その大罪を画き怒りの鉄槌を下したのはかなり勇気のいることだと思う。

冷たく苛烈なだけじゃなくて真っ当な正義感もある人だったんだと思うね。

そんなわけで、この地獄は安いが色々凄みを放っててオススメです。
Welcome to Hell😈💨
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