あまのかぐや

キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャーのあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

1942年、第二次大戦下のアメリカ、ブルックリン。戦争に参加したいと望みながら、病弱な体質のため何度も不採用の烙印を押され続けてきた愛国心溢れる青年スティーブ・ロジャース。科学万博の志願兵募集をみた彼は、亡命科学者アースキン教授にその崇高な精神をみとめられ、スーパーソルジャー第1号になる。超人血清の成果で、スティーブは人智を超えた速さと力、そして強靭な肉体を持つ正義感に溢れる兵士に生まれ変わった。しかし軍隊が欲しかった政府は、単体ヒーローの彼を戦地で戦う兵士とは認めず、星条旗を模したコスチュームを着せ、国債キャンペーンのマスコット「キャプテンアメリカ」に仕立てるのだった。マスコットだった「キャプテンアメリカ」が、どのように真のアメリカの英雄となったか、のお話、そして舞台は21世紀へ。

70年代テレビっ子の友、仮面ライダーシリーズってこんな感じでしたよね(わくわく)
悪の科学者集団とか、軍による実験とか、改造人間とか。もうこの設定だけでわくわくが止まらない。

また主な舞台を40年代のアメリカの市街地やヨーロッパ戦線にしたことも物語として心惹かれる理由です。スティーブ・ロジャースが育ったブルックリンの街並みや、秘密基地の入口を守るお店の「合言葉」とか、古風で粋なスパイ映画を思わせる。政府の秘密組織SSRの研究室や秘密基地などのレトロ感あふれる仕様も、いかにも古き良き特撮っぽくて楽しい。

当時の米国とソ連の兵器開発合戦、その背景には、ナチスの亡霊じみたオカルト思想ありの、マッドサイエンティストが狙う秘密兵器(ナゾの青い物体)のエピソードあり、いっぽうでは軍需産業の申し子、のちの「スタークインダストリー」創設者ハワード・スタークの(現時点では夢物語だけど)現実的な技術開発あり。…そんなわかりやすい対立の構図が描かれていて、テンポが良くみられます。マーベルというと「特撮ヒーローものはちょっとね…」と色眼鏡で観る人にもおおむね高評価なのは、そういう理由からかな、と思います。

いっぽうで物語に関して言えば、もやし体型な青年が強靭な肉体を手に入れ、さあスーパーヒーロー誕生!悪を討ってめでたしめでたし!…のはずが、スムーズにはいかない。

スティーブ自身も、観ている側も、星条旗の前時代的漫画的ヒーローをどうしたらかっこよく見えるのか苦労するキャストスタッフも、みんなのもどかしい葛藤が、中盤のドラマが踏切台となり物語として、劇的に覆る構成がとてもよかった。前半1時間強を経て、キャプテンアメリカがアメリカの意志に動かされるでなく、自分の信念で親友を救出しに行き生還する、ここからがいわば第二幕。真のキャプテンアメリカの物語です。ここからさき、それまでのどこか滑稽なカリカチュアなヒーローから、とてつもない魅力をもつ現実的なヒーローに生まれ変わる姿を目の当たりにします。そして「ファーストアベンジャー」の幕引きは、その真のヒーローという肩書が、時には、生命含めてすべてを犠牲にして、はじめて得られるもの、とも。

当時は第一線の俳優とはいいがたかったクリス・エヴァンスが、この先10年、他の誰とも変われない揺るぎないキャプテン・アメリカ像を作り上げたことは言うまでもありませんが、脇を固めたベテラン勢が手堅い。仏頂面で嫌味だけど頼れる上官 トミーリージョーンズ、第二次大戦時の人間にしか見えないトビー・ジョーンズ、キャプテンアメリカの心の父、スタンリー・トゥッチなど。

今作の悪役はアースキン博士の第一被験者そして失敗作となってしまったレッドスカルを演じるヒューゴ・ウィービング。

またスティーブの親友のバッキ―を演じたセバスチャン・スタンや女性将校ペギー・カーター役のヘイリー・アトウェルが、これまた古風な顔立ちやたたずまいの人選で、とても、良い。クリス・エヴァンスもそうだけど、当時はほとんどメジャー作で観たことのなかった彼らが、印象付けられた役柄でした。ペギー・カーターとスティーブのほのかな恋を匂わせるやりとり、彼女とトミーリージョーンズとの凸凹上司部下のやりとりなどが微笑ましくも印象的で、彼女のスピンオフができてもおかしくないキャラクターだと思いましたが、その後ほんとにできた(笑)

スティーブ役のクリス・エヴァンスのビフォア&アフターの体格の変貌をVFX技術で作り出す、これは何度見てもすごいなぁと思います。




今改めて観ると、この1作目、キャプテン・アメリカのコスチュームがどこかダサかったり、ド派手な星条旗柄の盾を中心に大戦時の銃器や戦車など駆使したアクションも、それはそれで(制作時の)時代感なのか、そこまで突出した感じはしません。これがどんどんシリーズを追うごとに発展し、進化していく過程を、何度見ても楽しめる。あの目立ちすぎるコスチュームで、赤と青の盾を背中に付けて敵陣を走る姿は、なんかもう、なんといっていいんだか、当初失笑しかありませんでした、ってのが正直なところ。

しかし「キャプテンアメリカ」は、この一作じゃとても語れません。このあと、あの盾を巡ってこれだけ涙する日がくるとは、われながら思わなかった。

このファーストアベンジャーの続きは「アベンジャーズ1」そして「キャプテンアメリカ2/ウィンターソルジャー」に続きますが、思い入れ深すぎてレビューできない。たぶん。

そんな彼の長い長い旅は、アベンジャーズ次回作で終わります。どんな結末を目にするにしても冷静でいられる自信は、いまをもってまったくないんだけど。


400。
家族に気持ち悪がられるほどの「キャップ過激派」臭をださないように、つとめて冷静に改めてレビューにしてみたけど、やっぱ気持ち悪いな(だって仕方ないじゃん!)
あまのかぐや

あまのかぐや