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新宿アウトロー ぶっ飛ばせのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 刑期を終え、ようやく出所した男を待ち構える1人の男。はぐれもの同士の2人の間には、守るべき仁義などありはしない。この渡哲也と原田芳雄の視線の交差が最後まで心地良い日活ニューアクションの佳作である。3000万円のマリファナを溶かし、捲土重来のチャンスを伺う男と、どこまでも風来坊だが誰よりも義理堅い渡哲也の友情、そして2人を取り持つような梶芽衣子との淡い三角関係。黒羽刑務所から新宿、横浜を経て再び新宿へ。登場人物たちのアクションの動線の素晴らしさもさることながら、70年代の風景が醸し出す時代の雰囲気も申し分ない。藤田敏八の映画ではいつだって昭和歌謡の情念がアウトローたちを優しく包み込むが、今作でも浅川マキ~日吉ミミの『男と女の話』の哀愁が、どっちつかずの男たちをある一つの衝動へと駆り立てる。

 沖雅也率いるバイカー集団との闘争はデニス・ホッパーの『イージー・ライダー』を真っ先に想起させるが、やはり新宿の住宅街に大型バイクの爆音は似つかわしくない。むしろロベール・アンリコの『冒険者たち』のような夢破れた男たちの緩やかな連帯こそ、藤田敏八は真に描きたかったのかもしれない。玉木宏樹のオフビートなジャズの劇判はまさに今作のBGMとしてうってつけである。脚本の方も、どこか間の抜けたバイカー集団を尻目に、友愛互助会という巨大組織を徐々に立ち昇らせ、「シニガミ(死神)」と対峙するサソリ(成田三樹夫)の好敵手としての存在感、拮抗する三角の力学を描くことでクライマックスまで観客を飽きさせない。

 梶芽衣子、地井武男といったその後の藤田作品を彩る俳優陣も見事だが、どこか浮ついた沖雅也の声色や、原田美枝子の初々しさも見逃せない。クライマックスの屋上ヘリポートのガン・アクションの痛快さ。ラスト・シーンはヘリコプターのあの低空飛行を許した高度成長期の日本の大らかさにも救われている。短いカッティングから、ふすまに映りこんだカラフルな色彩感覚、主人公の心に浮かぶある種のニヒリズムに至るまで、天才・藤田敏八は当初から藤田敏八だったのだ。無駄な場面を極限まで削り取った若き監督のプログラム・ピクチュアの野心作は、日活が日活らしかった最後の時代を我々観客の脳裏に刻む。
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