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チャルラータのodyssのレビュー・感想・評価

チャルラータ(1964年製作の映画)
3.7
【充実したインド映画】

インド映画界の巨匠であるサタジット・レイ監督のデビュー60周年を記念してデジタル・リマスター版が作られた。

時代は1880年のカルカッタ。つまりまだインドが英国の植民地だった時代。

ヒロインのチャルラータ(マドビ・ムカージー)は若く美しい女性で、新聞発行に熱を上げている夫にはあまりかまってもらえず悩んでいる。そこに夫の従弟が訪ねてくる。芸術に詳しい従弟と話をするうちにチャルラータの悩みは解消し、自らもペンをとって文章を書き新聞に投稿して採用される。従弟への感情はやがて恋愛感情に変わるが、そうと察した従弟は転居してしまい・・・

話の筋書きだけたどるとどうってことない映画だけれど、レイ監督の映像の美が遺憾なく発揮されている。カメラワーク、アップとロングの使い分け、場合によってはわざと人物を映さずに室内の調度だけ映す、などなど、その巧みな映像作りには感心するばかり。

自分でも映画を作りたいと思っている人には、必見の映画とも言えるだろう。映画とはこういうふうに撮るものだ、という見本のような作品になっている。

なお、新聞作りに熱中している夫の発言を通じて、当時のインドと英国の関係や、インドの知識人たちの考え方を知ることもできる。そういう見方も可能な映画なのである。
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