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オーケストラ・リハーサルのkaomatsuのレビュー・感想・評価

オーケストラ・リハーサル(1978年製作の映画)
4.0
あるオーケストラ楽団のリハーサル風景を取材した、真面目なドキュメンタリーかと思いきや、その実は狂騒の集団カオス・モキュメンタリー映画。

導入部分はいたって真面目。イタリアのある教会にて、楽団員たちのリハーサルを取材しようとテレビ局が来る。各楽団員は取材に応じ、個々の担当楽器の魅力を思い思いに語る。そしてリハーサルが始まるが、ノーギャラで演奏する団員たちは演奏に身が入らず、各々が自分勝手なことをやり始める。指揮者がキレるが、興奮するとついドイツ語が飛び出してしまう。そんな指揮者に反発し、とうとう指揮者不要として楽団員たちがストライキを始め、指揮者の代わりに超巨大メトロノームが出現。教会はカオスに…。さて、事態はいかにして収束するのか。

神聖にして厳粛な場があれよあれよという間にぶっ壊れていくシュールなコメディ的展開は、フェリーニの十八番だ。プッツンするとドイツ語が出る指揮者をはじめ、この狂騒を政治風刺と見てとるのはそう難しくないが、それほど政治的なメッセージが強くないフェリーニのこと、さぞかし撮影現場でも、脚本を盛って盛って、この騒乱をまるごと楽しんでしまった者勝ち、的なノリだったのでは。フェリーニが相棒ニーノ・ロータと最後のタッグを組んだことで、個人的には思い入れが強い作品だ。
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