シズヲ

マックQのシズヲのレビュー・感想・評価

マックQ(1973年製作の映画)
3.4
〈裸の町〉シスコはハリーとブリットにまかせたぜ!〈無法の町〉シアトルは俺が一人で引きうけた!(※日本公開時のポスターのキャッチコピー)

荒野の益荒男ジョン・ウェイン、都会派刑事(すぐ辞職して探偵になるけど)へと転生!!親友の刑事が何者かに殺された事件をきっかけに、陰謀渦巻く麻薬密輸組織の謎へと迫る。デュークは『ダーティ・ハリー』に出演できなかったことを大分後悔したらしいけど、本作はその鬱憤を晴らすような舞台設定になっている。“はみ出し者の偏屈な刑事が強引な手法で犯罪者を追い詰める”という筋書きはぶっちゃけデューク版ダーティ・ハリーだし、拳銃の発砲音までキャラハン刑事と一緒な辺り随分と意識している。でも必殺武器はまさかのイングラムだ。

デュークが既に高齢であることもあってか生身のアクションは乏しく、西部劇で見られるような“悪党をパワフルにぶっ飛ばすジョン・ウェイン”的な楽しさは薄い。結果として地道な調査による抑揚の薄い展開が続き、そこに70年代的な乾いたテイストが乗っかっているので、刑事モノというよりノワール映画のような味わいになっている。冒頭の警官が立て続けに射殺されるシークエンスも含めて、作中のヒリついた雰囲気は評価の割に案外嫌いじゃない。まあ地味なんだけどね。比較対象としては『ダーティ・ハリー』よりも『ブリット』のがちょっと近いかも。

諸々の粗っぽさや設定の二番煎じ感は否めないとはいえ、それらをデュークの圧倒的虚構性が包括してくれるので全編通して不思議な味わいがある(それが合うかどうかは人を選びそうだけど)。スーツ姿のデュークがいつもの横柄な調子を貫いたまま70年代の大都市を闊歩するだけで、ある種独特のハッタリ感が生まれるので凄い。社会の外側にある船内で目覚める初登場シーンも相まって、さながら西部劇の時代から現代社会へと蘇ったハリウッド版“リップ・ヴァン・ウィンクル”のような雰囲気も感じる。エルマー・バーンスタインのジャジーなスコアも良い感じだけど、所々で悪目立ちしてるのは気になる。

アクション的な見せ場は乏しいとはいえ、終盤のカーチェイスは中々のインパクトがあって良い。広大な浜辺で繰り広げられる追走劇の疾走感、そして抜けるような青空を背景にした絵的な鮮烈さはやはり印象深い。ハル・ニーダムがカースタントに関わっていたらしいので迫力があるのも納得。そして中盤から延々と引っ張り続けていたイングラムが最後の最後にようやく暴れるけど、凄まじいオーバーキルっぷりで清々しい。
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