MasaichiYaguchi

ツナグのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ツナグ(2012年製作の映画)
3.5
人は時に遠く離れてしまった大切な人や好きな人に、ふと思いを馳せたりする。
お盆やお彼岸に、亡くなったひとを思い出した人も多いと思う。
この作品は、たった一度だけ、亡くなった人と会わせてくれる案内人「ツナグ」の物語である。
もちろん故人との再会だから、簡単ではない。
「ツナグ」を介して、故人と再会するには三つのルールがある。
1.依頼人が死者に会えるのは、生涯に一度、一人だけ。
2.死者も、生者に会えるのは一度だけ、ただし死者からの依頼は出来ない。
3.会えるのは月の出る夜。夜明けまでの限られた時間だけ。
正に「一期一会」。
本作品では、「ツナグ」への依頼が3組登場する。
亡き母との再会を希望する中年男性。
交通事故で亡くなってしまった親友との再会を望む女子高生。
7年前にプロポーズ直後に失踪した恋人に会いたいサラリーマン。
生者も死者も、夫々が相手に伝えたい思い、伝えなくてはならない思いがある。
その思いが交わった時、スクリーンから感動の波が押し寄せる。
遺言を残して死ねる人ばかりではない。
不慮の事故や天災、急病で亡くなる人もいる。
愛する人や大切な人々に伝えたくても、伝えられない時もある。
そんな未練で、ぽっかり空いた心の穴を、「ツナグ」は、生者と死者との仲介を通して、優しさで埋めていく。
コロナ禍で心身共に疲れるこの頃、優しさに溢れた本作で癒されたくなる。