足拭き猫

鏡の足拭き猫のレビュー・感想・評価

(1974年製作の映画)
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母にとらわれた男性の私がその面影を追った作品。草原と森を渡る風が魔法のように幼少期にいざない母に甘える私を年を経た私が見つめている。納屋は燃え、森は霧をたたえてまるで絵画のよう。記憶の中の母はいつまでも美しいが、妻にも母を求めてしまうためケンカが絶えない。そういう時の絶望感はいかほどなのかと思ったし、タルコフスキー自身の経験でもあったのだろうか。印刷所でのトラブルや鶏の頭が落とされた瞬間の表情の暗さも小さい時の思い出か。
タルコフスキーのロマンチスト面が溢れた作品。音が印象的な映画だが上映音が小さくて残念。