やま

鏡のやまのレビュー・感想・評価

(1974年製作の映画)
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初見。
彼の記憶を覗く。映し出される映像は全て、彼が第三者的視線で見てるということなのか。

女性のセリフでノートを読む少年時代の彼に「赤線で引いてある、大事なとこだけ読みなさい。時間は短いんだから」というのがあったが、この映画きっと彼の記憶で赤線引くほど大事な記憶を短い100分間におさめたのだろう。そんな風に思える。

申し訳ないのだけど、セリフとかは多分そのうち忘れてしまうだろう。見終わった今でも覚えてるセリフはあまりない。
ただ映像だけは一生忘れられないかもしれない。スローモーションだったり、色々なカメラの技法を駆使してる。カメラ遊びのその先とも言える形を見させられた気分。割と長いワンカットにカメラを好き放題動かす。それに合わせて女優も動かなくてはいけないだろうし。印刷所のシーンがカメラワークの点で特に印象的だったかもしれない。

燃える家から始まり、カットの繋ぎも美しい。鏡、崩れゆく家、戦争、母親の存在。
何度も観なくてはいけない作品の一つになりそう。

観終わった後、自分の過去を少し振り返ってしまう。こんな芸術的な過去は一つ足りとも存在しないけど。

母と妻を哀れだからと言い表し、同一人物が演じるのもなかなかない試み。
やま

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