レオピン

ザ・インターネットのレオピンのレビュー・感想・評価

ザ・インターネット(1995年製作の映画)
3.4
ド直球の邦題 定冠詞ザをつけちゃうセンス たぶん会議でも満場一致で異論は出なかったでしょう それが時代の勢いってやつよ (英語圏では2016年から普通名詞のinternetへ)

96年正月映画。Windows95が発売されてから1か月あまり。まだ多くの日本人がインターネットってなにそれ?おいしいの状態。

頭からつま先までおそらく8000円しないであろう服装で逃げまわるサンドラ・ブロック Gジャンスタイルで走り回る彼女、けっこう小柄なんだな。なんだかごつい姐さんイメージを勝手に抱いてた。

普段引きこもり生活してるもんだからリアルに弱い。あんなミエミエの男にナンパされちゃってねえ。サイレンサー銃持ってる時点で逃げだせ。あの一回ロマンスに落ちてからというのが上手いというかなんというか。ジュリア・ロバーツだったらもっと早くに気づいていたな。

窮地に追いやられてもまだピンときていないこの鈍感な主人公になんだか華原朋美感を感じて観てしまった。その人についてっちゃダメだってば
同じ頃に「I BELIEVE」「I'm proud」と立て続けにヒットを飛ばしていた朋ちゃん。
サンドラも『スピード』『あなたが寝てる間に…』でブレイクしてさぁ次はって時に、この男運のない陰キャで控えめな役柄。

だが一度捕まって刑務所にブチ込まれ偽FBIによって釈放されたあと車の中でこの怪しい男に、
ヤレヤレだわ まったくアンタたちって悪党ね

ここにきてようやくヒロインらしい腹の座った台詞が聞けた。朋ちゃんからの空条徐倫感へ。
人は牢獄に入れられることで何かを得るのか。
ここからは持ち前のスキル?を駆使して巨悪を暴いていく。芸は身を助ける。

しかしこの時代って立て続けにこの手の作品が作られていた。新たな技術が出てきたことでアメリカ人の陰謀好きに拍車がかかったのだろうか。ふとしたことから政府を含む陰謀に巻き込まれる主人公たち。

国防次官がホモフォビアでそれゆえにエイズに偽装されて殺されたというのも時代だ。巨悪がビッグテックの創業者らしい人物だったというのは今に受け継がれる陰謀論。だけどゴム人間だなんだいってる今の方がよっぽど後退している感じがするが。

友だちも恋人も作らず一日の大半をコンピュータ画面に捧げている主人公。これも今や多数派だ。
仕事はリモートで友人はチャットの中、近所づきあいもまるでなし。そんな状況でいざ個人情報を全て書き換えられてしまったら・・・・・・クレジットカード 口座 社会保障番号 前科前歴
更に輪をかけ、たった一人の肉親である母親はアルツハイマー病ときている。

何一つ自分の存在を証明出来ない、実存の不安。なりすましの恐怖。どれだけ自立していようと人間は他者がいなければ存在できない。名前がなければ生きられない。

今気づいたが、あのジャック自身がウィルスみたいな男だった。不注意とはいえそれを取りこんでしまったアンジェラのリカバリー大作戦。文字通りエスケープキーで逃げることに成功した。

この頃はデジタル監視社会モノといっても「クリッパーチップ」のような政府による情報収集が仮想敵だった。今や個人や民間企業による情報の蓄積をどうするかって時代。新たな『ザ・インターネット』は作られるのかな。 

ジャック役に英国の俳優ジェレミー・ノーサム
ドクター・アランにデニス・ミラー

⇒『ペリカン文書』と同様にフロッピーディスクや機密情報はマクガフィン。重要な情報はたいていテレビをつけると得られるよ 笑
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