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模倣犯のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

模倣犯(2002年製作の映画)
3.0
東京の下町で豆腐屋を営む有馬義男(山崎努)の孫娘・古川鞠子(伊藤美咲)が行方不明となり、10カ月後、近くの公園で彼女のバッグと切断された女性の右腕が見つかった。
誰もが鞠子の腕だと思った。ところが、犯人を名乗る男がメディアに電話出演しそれを否定。
後日、犯人の出したヒントから別の場所で鞠子の遺体が発見される。この前代未聞の展開に、人々の好奇心は駆り立てられ、こぞって事件を報道するメディアに踊らされていく。
そして、更にそれを増長させるかのように犯人は殺人ライヴを携帯電話に流すのであった。しかしその翌日、ある事故車から犯人と思しきふたりの男・栗橋浩美(津田寛治)と高井和明(藤井隆)の遺体が発見されたことから、事態は収束に向かうと思われた。
そんな中、和明の無実と浩美の共犯者が別にいることを主張する人物がマスコミに登場した。ふたりの中学時代からの友人で、経営コンサルタントの網川浩一ことピース(中居正広)だ。多数の番組に出演し、真犯人の存在を訴える彼はたちまちマスコミの寵児となり、日本中が魅了されていく。だが、彼こそその真犯人であった。それは2年前、衝動的に恋人を殺害してしまった浩美に助けを求められたピースは、彼の犯行を隠蔽する為に森は木を隠すの例えよろしく、若い女性ばかりを狙った連続誘拐殺人を思いつき、氷川高原の別荘をアジトにそれを実行したのだ。
宮部みゆきのサスペンス小説を映画化。
まず、数少ないが良かった点について。
ピースを演じた中居正広の演技。「アナログを捨てデジタルになれば、警察に見つからない」と人情や絆など善をせせら嗤う言動をしていながら、自分の子供を有馬義男に託して死ぬなど、単なるトリックスターではない男を魅力的に演じ、ダークで哀愁漂うキャラクターのイメージがついたきっかけの役柄。
CMやワイドショーを、テレビをザッピングしているような編集で取り入れることで、移り気な消費し続ける現代人の空疎さを演出。
道徳や人情を大事にする有馬義男と計算で生きる功利主義的なピースの対立を絶妙に表現した、公園とワイドショーでの有馬義男とピースの会話。
あとは、ほとんどダメ。
ピースを、ダークヒーローとして描いたこと。原作者は、ピースに自己承認欲求の為に犯罪を行う劇場型犯罪者として描き、道徳心のある有馬義男らがピースを追いつめることで、劇場型犯罪者を否定すべき対象として描いたのだが、森田芳光監督がやったのは逆なので、原作者が試写会途中で退場したのも無理ない。
ストーリーを端折り過ぎて、意味不明な展開、ラストのチープな爆破CG、被害者家族の苦しみややり切れなさも、原作者が描きたかったものが無くて、原作が原型を留めていない残念作品。
この小説の映像化なら、坂口健太郎がピースを演じたドラマ版がオススメです。
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