恭介

アビスの恭介のレビュー・感想・評価

アビス(1989年製作の映画)
3.8
懐かしトンデモアクション映画13

アクションではないけどキャメロン作品の中では飛び抜けてトンデモ作品(笑)

本作は劇場公開版とキャメロンこだわりの完全版の二種類が存在する。約30分長い170分完全版の何が違うかというと、殆どラストシーン。結末が全く違うという完全版も珍しい(笑)

原因不明の事故で沈んだアメリカ原潜の救助を依頼された民間の海中石油発掘チーム。その彼らとアビス=深淵に潜む謎の生物?とのファースト・コンタクトを、キャメロンならではのアクションとラブ・ストーリーで魅せる超大作。

本作はキャメロンの中でもいろんな意味で、結構重要な作品だと思う。まず彼が海中の世界に取り憑かれたキッカケとなった作品。これが後々、誰もが映画館に押し寄せた世紀のヒット作、タイタニックに繋がる。沈んでいるタイタニックを自費で調査、というか殆ど趣味で探索するまでの入れ込みようは凄い(笑)

そして、視覚効果の技術面に於いて、本作はキャメロン自身のみならず、映画界にとっても革新的な技術を披露している。
視覚効果にとって最大の難物は水を表現する事。ミニチュアを使用したシーンでも水は小さく出来ない為、巨大なタンカーをミニチュアで撮影しても、しぶきは実物大になるので違和感が出る。
そんなタダでさえ難物の水で謎の生物?をCGで表現する事に挑み、成功させた功績はデカイ。アカデミー賞視覚効果賞受賞も納得の出来栄えだ。

その革新的な技術が後のターミネーター2に登場した液体金属の悪役、T-1000に繋がる。アビスでの成功があったからこそターミネーター2が製作されたと言っても過言ではない。

しかし、そんな苦難の視覚効果以上に実際の水中撮影はもっと難しいはず。
巨大なタンク内にセットを組み、実際に俳優が水中で演技する。1つ間違えれば命に関わる事故になる可能性もあり、本作ほどライブの水中シーンが多い映画も珍しく、キャメロンの本気度がヒシヒシと伝わってくる。

主演のエド・ハリス(くどいが世界一管制塔責任者が似合う男笑)はその完璧主義者キャメロンの期待に応える熱演を文字通り身体を張って見せてくれる。
特に終盤、元嫁役のメアリーが生死の境をさまよっているシーンで懸命に蘇生しようとする演技は、ガチの人命救助シーンと勘違いしそうになるぐらいの感情移入で、こちらが息をするのも忘れるぐらい魅入ってしまうほどだ。

また、キャメロン作品常連のマイケル・ビーンも善玉のイメージを覆す、イカれた軍人役で新境地を開拓しているのも見どころ。

そんなSFでありファンタジーでありヒューマンドラマでありラブストーリーでありアクション映画であるアビスは、まさしくごった煮のトンデモ作品(褒め言葉)で、映画の持つ色んな魅力を1本で味わう事が出来る。

タイタニック以降、監督作品が少なく孤高の存在になってしまったキャメロン。
アバターにかかりっきりでパート5ぐらいまで製作するとか言っちゃって大丈夫かなぁと要らぬ心配をしてしまう(笑)

ファンとすれば、続編ばかりじゃなくもっと色んなジャンルの違う作品を観てみたいってのが本音なんだけどなー。アビスとかトゥルー・ライズみたいな(笑)
恭介

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