じょの

アンヴィル!夢を諦めきれない男たちのじょののレビュー・感想・評価

3.0
かつてアンヴィルのローディとして働いたことがあるほど、このバンドのファンであるサーシャ・ガヴァシが監督。
その愛が画面からビシバシと伝わってくる。しかしそれだけにフレームが彼らに寄りすぎていて、記録映画としての客観性が薄れたような気がした。
この監督はドキュメンタリー作家ではなく、脚本家なため、作品が物語性を帯びるのは致し方ない。

特にストーリー後半、アンヴィルが日本のロックフェスに出演が決まった、という場面。私はここから鼻白んだ。
たしかに“ここ”にオチをつけたい気持ちもよくわかる。バンドを応援しているならば、そういうシーンで幕にしてやりたい。見ている者が「よかったね」と涙ぐむようなベタな筋書き。

もちろんこれは、本当にこのタイミングで日本のロックフェスに出演が決まったわけで、断じて“筋書き”などではない。

でも私はこのシーンで素直に「アンヴィルを待っていたファンは日本にたくさんいたんだね!」とは思えなかった。
スクリーンに一瞬チラリと写ったタイムテーブル。
アンヴィルの後の出演は以下の通り。

HARDCORE SUPERSTAR
BACKYARD BABIES
DIR EN GREY

一番前の列に陣取って、雄叫びを上げていたのが、“アンヴィルのファンだ” と、私は断言できない。
だから、このオチにはモヤリとする。

だからといって、この映画がダメかといえば、別にそういうわけではない。
ドキュメンタリーはあえて“魅せよう”としないでも充分面白いものであるので、あまり監督の作為が入らないほうが、私としては好みなのだが、これは単に好きずきとも言える。

リップスとロブの友情をがっつりカメラは押さえていて胸熱だし、英語のできない素人ツアーマネージャーとか、周囲の人々もキャラが立っている。
わかりやすい感動と、わかりやすいキャラには好感がもてるし、何より画面全体から溢れでてくる、 “バンドへの愛”。これが本作を素晴らしいものしていて、「やっぱバンドは愛だよな!」と実感させてくれる。

バンドのドキュメンタリーとしては〈メタリカ:真実の瞬間〉に軍配が上がるが、人生を見つめるドキュメンタリーとしては充分すぎる内容でした。

最近、やる気が不足ぎみな方に、オススメする一本です。
じょの

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