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アギーレ/神の怒りのtorumanのレビュー・感想・評価

アギーレ/神の怒り(1972年製作の映画)
4.1
特集上映「ヘルツォークは80歳になる」にて鑑賞

映画史に燦然と輝くヴェルナー・ヘルツォーク監督と怪優クラウス・キンスキーコンビのニュー・ジャーマン・シネマの1作です。
タイム誌の歴代映画100選にも選ばれています。

16世紀、伝説の黄金郷エルドラドを求めてアマゾンの奥地に分け入ったスペインの探検隊。
川の濁流や食人族により、1人また1人と死んでいく。
恐怖に怯える探検隊の中、副隊長のアギーレは暴君と化しエルドラドを求めて突き進んでいく…。

冒頭のペルーの山を縦走している探検隊の異様な映像に圧倒されます。
延々と続く山道と探検隊の蟻のような列。
山の雄大さとちっぽけな人間が対比され、自然への畏怖が醸し出されます。
その後に続くアマゾン川の濁流も凄いです。
死者が出なかったのか心配になるほどの迫力です。

CGなどない時代でのアマゾンでの撮影です。
次第にヘルツォーク監督とキンスキー演じるアギーレの狂気がダブって見えてきます。
実際に出演者が過労で精神病になったり、クラウス・キンスキーが発砲事件を起こしたりという事もあったようです💥

クラウス・キンスキーの異様な容貌と眼力も凄いです。👀
彼の本質なのか演技なのか分からない狂気に圧倒されます。
(あのナスターシャ・キンスキーが娘さんというのもある意味恐怖です💦)

『地獄の黙示録』の元ネタというだけあり、撮影現場の困難さ、アマゾンの自然と対比された死の匂い等、共通点がたくさん見受けられます。
また、ドイツのプログレ・ロック・グループの「ポポル・ヴー」の音響のような音楽も『地獄の黙示録』を想起させます。

ヘルツォーク監督とキンスキーは、互いのエゴをぶつけ憎しみ合いながらも、唯一無二のコンビとして、その後も作品を撮り続けました。
キンスキー死亡後の監督はドキュメンタリーを中心に気の抜けたような作品を撮り続けるようになりましたが、この作品には時代に残るしっかりとした爪痕を残しています。

ラストのイカダに取りつくリスザルの群れ。
心に残り続ける映像ですがトラウマです。

誰にでも薦められる作品ではありませんが、ハマる人にはハマると思います😅
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