【黄金と安眠遠し密林】
ニュージャーマン・シネマの巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督の代表作の1つである1972年の作品
〈あらすじ〉
1560年末、スペインの征服者たちによる探検隊は、黄金郷エル・ドラドを発見すべくアマゾンの奥地を目指してアンデス山脈最後の峠を越えようとしていた。やがて副官のアギーレは娘とともに川を下り始めるが、増水のために筏が流され、渦に巻き込まれた兵士が命を落としてしまう。さらに探検隊は、熱病やインディオの襲撃に見舞われ、内部崩壊を始める。そんな中、アギーレは常軌を逸した壮大な野望に取り憑かれてゆくのだが…。
〈所感〉
ヘルツォーク作品初鑑賞。『地獄の黙示録』を彷彿とさせられるが、全く冒険譚っぽくないブルーな作品。実話をベースに、征服欲に憑りつかれたスペイン人たちの傲慢さと、それ故に招いた悲劇が、アンデスの大自然の中で描かれていく。会話は最小限度に抑えられ、只管に人間サイドの状況描写や自然の驚異を映しているため、良い意味で映画っぽくなく、起こった出来事を淡々と綴っていく様が、非常にリアリズムに徹しており、風変わりだが面白いと思った。今だと人道的、コンプライアンス的にありえないようなロケを敢行していて無条件に腰砕けになってしまうような映像の連続。実際にジャングルに分け入り、アマゾン川を下るという厳しい条件下で撮影が行われ、機材や食料を運びながらの撮影そのものが過酷な冒険であったという逸話を持つそうだ。特にアギーレを演じたクラウス・キンスキーの取り憑かれたように鬼気迫る演技は一見の価値ありかと。