このレビューはネタバレを含みます
バナナマンが好きで見ました。
不謹慎で悪意のある映画です。
派手さは無いけれど、裁判所というファンタジーなのだけれど手の届く舞台と、設楽さんの演技に引っ張られてずっと見てられました。
人によってはわからないですが、自分は設楽さんの、大げさすぎない誇張された演技がすごく好きです。使い道は狭い気がしますが、確立した世界観を持った演技で、設楽さんにしかできないんじゃ無いかな、と思っています。だからこそ台詞に頼りすぎずもう少し演技に頼っても良かったんじゃなかろうか、という場面がちょくちょくありました。
ただ、たまに挟まるナレーションがこの映画の俯瞰した雰囲気を強めている役割も担っているので、ナレーションに関しては説明口調ではあったものの入れて正解であるように感じます。
内容としては、前半は様々な裁判が見られて楽しいし、後半は一つの目標に向かって色んな要素が収束していくのであっという間です。
この映画の最大の悪意は、やはり法廷が始まった直後に少年が実は放火魔だった、と自白してしまうことでしょう。確かに「本当に少年が無罪かわからないのにそこまでやるかね?」と、これで無罪を勝ち取ってもモヤモヤが残る予感はしていましたが…
最初見たときはふざけんな!と思ってしまいましたが、無理もない。今までこの映画のテーマだと思っていた「全く無関係な人間でも他人の人生に少しばかり変化を与えることができる」が、あろうことか映画に完全否定されたんですから笑
見終わった直後はただの意地の悪い映画、くらいに捉えていたのですが、よくよく考えるとこれは、「自分の楽しみの為に他人の人生を覗くような行為を正当化して、他人の人生に影響を与えているなどと思い上がるな」という戒めなのかなと思えてきました。そもそもこの映画は色々な裁判のシーンがありますが、少なくとも自分はそのシーンを、実際このようなことが行われていると知っていながら娯楽として楽しんでいたのですから。
もしそうだとしたら、冷めた目線からの結論だなぁ〜と思いつつ、なんだかんだ少年が自白したシーンは印象的で心に残ったし、こういう綺麗事の真逆を行くようなテーマは心地いいなぁとも思いました。
めちゃくちゃ面白い、というわけではなかったのですが、いい意味で味わったことのない衝撃を受けたし、メッセージが好きなので高めのこの点数で!