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殺意の香りのRのレビュー・感想・評価

殺意の香り(1983年製作の映画)
3.9
特に理由なく手にとって、大して興味湧かなかったけどふらっと見てみたら、なかなかの逸品やった。強烈な顔面が印象的な渋系男優ロイシャイダー演じる主人公のサムは最近離婚したばかりの精神科医で、カウンセリングしてた男性患者のジョージが何者かに殺害され、ジョージの愛人だった美女ブルックがサムの前に姿を現す。ブルックを演じるのは若き日のメリルストリープ。現在のコテコテなエネルギッシュばあさんからはかけ離れた繊細で薄幸なイメージ。こんな美女やったんや! 演技はこの頃からすごいな! サムはブルックに心惹かれ、ジョージの殺人に深い関心を抱くようになり、過去のカウンセリングログを読み返す。ストーリーの進行に、サムが記録を読み返してるショットが何度も入るんやけど、そのかぶせ方が見てて非常におもしろい。淡々としてるけどカットが切り替わるたびにハッとする。記録を読んでるサム、ジョージとの過去のカウンセリング風景、ジョージの主観ショット、さらにはジョージの夢まで、それぞれのピースが次々に切り替わって少しずつ全体像が浮き彫りになっていく。その全体像自体は、はっきり言って大したことない、テキトーに作ったとしかいいようのない心理サスペンスで、3日たったらどんな話だったかおぼえてなさそう。けど、ハマる人にとっては、ところどころの演出は忘れがたいモノとなろう。本作のもうひとつの、てか最大の魅力は、実は音響なのではなかろうか。いくつか、うおおおお、こええええ、とビクビクしながら見たシーンがあって、その恐怖は静けさの中の物音なのです。例えば、マンションのランドリールームでの、洗濯機の回る音、背後から聞こえる物音、その出どころを確認する主人公、エレベーターの開く音、ギョッ! みたいな。あと、クライマックスも音の演出が巧みで、見る者に目を凝らし耳を澄ませるように誘導しておいての…ひぃ!!! まじビビる。質の良いヘッドホンで見てたので、映画の音なのかホントの物音なのかわからず、映画見終わったあと不安になって、うちの中に誰もおるまいな!と一部屋一部屋、風呂場とトイレも電気つけて確認してしまいました笑 ちなみに、クライマックス直前のメリルストリープの長回しの演技すごいっす。この人の将来の多数の賞獲得はすでにこの時に決まっていました。本作の全体のノリがちょっとばかし悪いのは、ロイシャイダーのエモーションがあんまり伝わってこないからなんじゃないかなー? とはいえ、そこそこの掘り出し物だったんじゃないかな、と思ってます。
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