くりふ

ならず者のくりふのレビュー・感想・評価

ならず者(1943年製作の映画)
2.5
【ジェーン山あり谷あり】

「『ならず者』のすべてはジェーン・ラッセルの胸、おっぱい、大きさ、それを見せましたね」

IVC版DVDの解説で、淀川先生がそう語っておられます。さすが正しいです。おっぱい見てサヨナラ×3な作品…と言ってしまえばその通りです。

ハワード・ヒューズ監督も実際、おっぱい効果の最大化を狙ったらしく、衣装さんの前で、ジェーン向け特製ブラの設計図まで書いて見せたとか。何が彼を、そこまでおっぱいさせたのでしょうか?

『アビエイター』でもその謎は明かされていなかったと思います。とは言っても、いまの感覚だと、大したもん出てくるわけでもないですが。

はじめは隠すように、布下山としてそびえ立ち登場。その後、物語に沿い、だんだん谷間が見えてくる…となる演出は、怪獣映画の王道のようでもあり、うん、さすがそこだけはわかってるな、と感心しましたけれどおっぱい。

予定していたハワード・ホークス監督と決裂し、自身で監督することになり、まさしく金持ちの道楽で、ヒコーキ仕事の合間で撮影を続けたという本作。

全体では単純に、人物描写のキホンができてないなあ、と感じます。で、近視眼的で針小棒大な演出、行き当たりばたーりの展開に難儀します。物語でなく、段取り見せられている感もあり。効果音は時々ギャグです。

終わってみると、けっきょく何のお話だったか、よくわかりません。え~っと、確かビリー・ザ・キッドが出ていたと思いますが、忘れました。

「三人の道が交わると、これほどもつれてしまうものか」たぶん、これが本作の決め台詞の筈ですが、監督の頭の中がもつれてるだけじゃないかと思いました。いま作られたなら、きっとゴールデン・ラズベリー受賞を狙えます。

本作でデビューのジェーン・ラッセルさん。重量感、ありますねえ。ミシェル・ロドリゲスさんみたいに、ふてぶてしい面構えをしています。確かに巨大な山と深い谷はお見事なのですが、表情はまだまだ乏しいです。

役としてもあんまりですね。女なんてやっちまえばこっちのもんな役だから。

お勧め処方は『アビエイター』との合わせ技。一緒にみると色々興味深い。心を病み引き籠ったヒューズが、本作を繰り返し見る描写がありましたが、ジェーンのシーンばかりでした。唇アップに着色したカットが印象的。彼女本人より、本作で描いた彼女に奇妙な執着があったようですね。

MPAのおっぱい審査で、当時の有名女優の谷間写真をずらりと並べて、ジェーンのそれと比べ実際に計測してみせたのは、ホントにやったらしい。伝記チラ読みしたら出てました。で、ほぼ、成功したとか。

そんなこんなで、作品の質だけで断罪せず、ハワード・ヒューズという人物を知る入口、興味、そして淀川先生曰く「ジェーン・ラッセル出世映画」としての側面をみるのが、いまでも本作を楽しむための、ポイントなんだろなと思いましたおっぱい。

<2012.3.6記>
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