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深く静かに潜航せよのtakのレビュー・感想・評価

深く静かに潜航せよ(1958年製作の映画)
3.5
戦争映画の中でも潜水艦ものには秀作が多いイメージがある。フランス映画なら「海の牙」(1946)、ドイツ映画なら「Uボート」(1981)、アメリカ映画なら「レッド・オクトーバーを追え!」(1990)。狭い艦内の空間、ソナー音や計器、潜望鏡でしか知ることができない外の様子、深海に飲み込まれるかもしれない恐怖。潜水艦という舞台だからこそ描かれるドラマがある。ハリウッド黄金期に製作されたこの「深く静かに潜航せよ」も潜水艦ものを代表する秀作だ。

日本の駆逐艦に潜水艦を沈められたリチャードソン(クラーク・ゲーブル)は、新たな艦に配属された。そこには兵士たちに次期艦長にと慕われるブラッドソー(バート・ランカスター)がいた。厳しい訓練を課すくせに、敵艦を目の前に攻撃を加えないリチャードソンにブラッドソーら部下は不満を抱いていた。ある日遭遇した駆逐艦モモを訓練を重ねた戦法で勝利したことから、兵士たちの士気は高まった。だが、リチャードソンは当初目的地としなかった豊後水道に進路をとるように命ずる。自分を沈めた駆逐艦アキカゼに復讐するために・・・。

今と違って特撮が発達している訳ではない時代。映画前半で潜水艦が見える場面は洋上を浮上して航行する場面だけである。映画後半の戦闘シーンで初めて水中を航行する姿が映し出される。駆逐艦が放った爆雷に耐える場面と、日本軍の潜水艦との息詰まる攻防の場面。それがチープと言われれば仕方ないが、この映画の魅力は何と言っても艦内での人間ドラマだろう。クラーク・ゲーブルがまるで「白鯨」のエイハブ船長のような執着心をみせ、例え部下に嫌がられても信念を貫こうとする姿はかっこいい。一方で兵士たちを守ろうとするバート・ランカスターの正義感は実にスマート。それでも次第に上官を理解し、戦果を挙げるクライマックスには感動させられる。壁に貼ってあるセクシーな女の子の尻をさわるのが縁起担ぎという場面もなかなか楽しい。特撮なんかなくたって、戦争アクションは撮れる。さすがは名匠ロバート・ワイズ。それにしても、きちんと原題の意味が伝わる邦題がいいね。今はこういう気の利いた邦題がないもんね。
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