イルーナ

フランケンウィニーのイルーナのレビュー・感想・評価

フランケンウィニー(2012年製作の映画)
4.2
バートンの初期作品『フランケンウィニー』。
かつてお蔵入りにされた作品が、セルフリメイクされるまでに大出世。
ここまでの経緯を辿った作品というのも珍しいのではないでしょうか。
まさに本作のスパーキーのごとく、お蔵入りという作品としての実質的な“死”から口コミで評判が伝わって商業デビュー作『ピーウィーの大冒険』につながったばかりか、やがて同時上映・収録という形で世に知られ始める。
これだけでも奇跡的だと思うのですが、最終的に立派なメジャー作品として復活。こうして書くと、本当にドラマチックだ……
しかもその手法が命なきものを動かすストップモーションアニメだということを考えると、なおさら暗示的。
スパーキーの可愛さも表現技法が増えたことで大幅増し。一度死んでるはずなのに、何あの生命感あふれるモチモチ感は!
尻尾など体のパーツが取れてもむしろ愛嬌と感じられるのはさすが。普通に考えたらグロい光景になりそうなはずなのに。

オリジナルが30分程度の短編だったので、当然色々ブラッシュアップされてるわけですが……
まずスパーキーの死因。オリジナルでは道路に飛び出した所車が……だったのですが、本作では主人公が野球の試合でホームランを打ったのが死の引き金という、さらにトラウマが深まりそうな展開に。
一方で登場人物も大幅に増え、全体的ににぎやかなムードに。
特に科学の先生の掘り下げがなされて、作品のメッセージをよく伝えてくれる存在になっていました。
ヴィクターの最初の実験が上手く行ったのは、根底にスパーキーへの愛があったからで、他のクラスメイトの実験ではああなったのは、結果だけを重んじて名誉欲に目がくらんでいたから。
クライマックスは完全にモンスター映画になってましたね。特にあの怪獣が出たシーンでは場内大爆笑だったのを覚えてますw
シェリー対コロッサスの構図はちょっとポケモンバトルを意識してるのかな?でもその顛末は……あれ『バンビ、ゴジラに会う』ですよね?直前に映ってた映画館に『バンビ』のポスターがあったし。
こんな感じで、オリジナル版で出来なかったことをのびのびやってて微笑ましい。
おヒゲくんだけは唯一生きた存在だったので不憫でしたが……
ラストはオリジナル版の時点で抱えていた「いくら愛があるとはいえ、死者をホイホイ甦らせていいのか?」という部分へのフォローが多少なりともなされていました。
せっかく生き返っても、世間の目を恐れて屋根裏部屋に閉じこめられっぱなしって、よく考えたら可哀そうな境遇のスパーキー。しかも自分が一度死んだことに気づいてないから尚更。
ただそれ以外は変わらないので、モヤる人はモヤるかもしれませんね……
あと今回、かなり伏線ぶん投げて終わっているので注意。
科学展は一切の描写なしで終わったし、透明金魚が行方不明になったのも結局完全スルー。特に後者は「蘇生させた生物は寿命が短いのでは?」と示唆される重要なシーンであったはずなのですが……

アニヲタwikiにまとめた記事
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/52794.html
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