垂直落下式サミング

E.T.の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
4.5
80年代ポップカルチャーを彩るスピルバーグのキッズムービー。少年と宇宙人の心の交流を描いた、温かく感動的な作品。
スピルバーグがはじめて自身の映画会社で製作した作品である本作が画期的だったのは、企業との商品タイアップによって制作費を捻出する戦略をとっている点だ。
主人公の家にあるオモチャも、E.T.が食べるお菓子も、エリオットが乗っている自転車も、どれも実際に売られていたものである。
レトロオモチャが大好きなので、ラガディアン人形が画面に写り込むだけで嬉しくなってしまった。ぬいぐるみやお菓子をいっぱい散らかして遊びたい!
これらの出し方は、ほとんど『トランスフォーマー』のような今日的なプロダクトプレイスメントの入れ込みかたと変わりはないのだけど、映画冒頭でマイケルたちがやっているダンジョンズ&ドラゴンズっぽいボードゲームの内容が後に出てくる台詞にかかっていて、TRPGにある程度理解がないとセリフの意味がわからない場面があるので、ひとつ紹介したい。
それはエリオットが兄のマイケルに、E.T.のことを大人には内緒にしてくれと口止めする場面で言う「I have absolute power」が、エリオットがD&Dをやっている兄たちに仲間はずれにされるときに言われる「He has absolute power」への対応になっているということだ。
ここでの「absolute power」というのは、D&Dのゲームマスターという役割が持つ権限のことを指していて、彼が許可しないとゲームに参加はできないということだ。
つまりエリオットは「僕はお兄ちゃんたちみたいに意地悪じゃないから仲間に入れてやるよ」という意味でこう言っているのであり、さらには、優しい心の持ち主のエリオット少年こそが物語の鍵をにぎる中心人物なんだと、観客への宣言でもあるのです。