河豚川ポンズ

E.T.の河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
3.8
ハートフル異星人交流な映画。
毎回観るたびに思うんだけど、E.T.と指合わせてトモダチ...みたいなシーンって、ドンピシャでそういうシーンなんて無いのに、なんで観たことある人もない人も「E.T.」って言えば、まず最初にそういうシーンが思い浮かぶんですかね。

アメリカのとある一軒家、10歳の少年エリオット(ヘンリー・トーマス)は兄のマイケル(ロバート・マクノートン)とその友人たちに意地悪をされて、ゲームに加われないでいた。
マイケルたちにピザの出前をもらってくるように頼まれたエリオットはしぶしぶ外に出るが、その時物置から物音が聞こえてくる。
慌てて家の中のマイケルや母親のメアリー(ディー・ウォレス)たちを呼んでくるが、そこには見たことのない足跡があるだけだった。
マイケルたちにバカにされるエリオットだったが、どうしても気になり物置の裏手のトウモロコシ畑に向かう。
また同じ物音が聞こえ、音を頼りにそこに向かうと、そこでエリオットは見たこともない宇宙人に遭遇するのだった。


この前の「ジョーズ」と同じく午前十時の映画祭で鑑賞。
名作中の名作とは言え、さすがに公開から30年以上も経ってしまうと、E.T.のマペットもなかなかチープなものに見えてくるけど、それでもこういう古い映画を劇場でわざわざやってもらえるのは本当にありがたいなあ。
前に観たのははるか昔の記憶だし、覚えているのは空飛ぶシーンぐらいしかなかったけど、改めて観てみると前半がもう完全にSFホラー。
「ジョーズ」よろしく、前半は徹底して母親以外の大人の顔を写さない。
別にE.T.がひどい目に合うかどうかなんて決まってないけど、エリオットから見たE.T.を追いかけてくる大人たちの恐ろしさはよく伝わってくる。
「未知との遭遇」もなかなかに怖いというか、錯乱した父親が暴走していった話のようで恐ろしかったけど、こっちも負けてないと思う。
それにしても「E.T.」も「未知との遭遇」も、どっちも大概ろくでなしな父親なのをみると、本人の家庭環境がバチバチに反映されているスピルバーグ監督作品らしさがあるね。

前半が不穏なムード全開なのに対して、後半からは一気にSFでジュブナイルでハートフルなストーリーに転調してくる。
最初は悲鳴をあげていたエリオットやマイケル、ガーティ、そして最後には母親のメアリーまで、E.T.のために協力する。
ものすごくスケールダウンというか、陳腐な言い方をすると、子どもがペットを飼い始めたときと同じような感じなのだろうか。
でもそれ以上に、エリオットとE.T.との間には強い絆と呼べるものがあって、その分2人の別れは辛く、しかし温かいものだった。
そういう大人への一歩をエリオットが進めるのが、この映画での主なテーマだった。
シンプルながらしっかり伝わるこのメッセージは、さすが往年の名作、さすがスピルバーグ監督という感じ。
それにしても、兄のマイケルなんて最初の方は絶対意地悪なやんちゃ坊主やろ…と思いきや、つるんでる友達含めてめちゃくちゃに良い奴。
空気も読めるし、いざとなれば度胸も見せるしで、洋画界のベストオブ兄貴まである。
ここまで株上がりまくりなキャラクターもそうそういない。
ちゃっかり妹のガーティはドリュー・バリモアだし、自分はこの時エンドロールで初めて知った。

もうたぶん地上波でも古すぎてやることもなさそうだし、劇場でちゃんと見れて本当にラッキーだったな。