カント

ポエトリー アグネスの詩(うた)のカントのレビュー・感想・評価

4.5
韓流ドラマ。これは凄い💡
老女の日常に潜む、心の闇を描いた社会派ドラマの傑作。切実で重い展開の連続なのに、ドラマツルギーが秀逸なので目が離せない。

先日のニュースで日本老年学会が高齢者の定義を75歳以上と発表しましたね。日本人の男女平均寿命が83歳に対して韓国は81歳(北朝鮮は69歳)なので、主人公ヤン・ミジャ66歳は、ある意味「現役」です😌

✏祖母ヤン・ミジャは、中3の孫ジョンウクと2人で暮らす、おしゃれな老女。離婚した娘はジョンウクをミジャに預けたまま釜山暮らし。一応、娘(ジョンウクの母)と連絡は取り合うけれど、基本ジョンウクの面倒は祖母ミジャが見ている。
生活保護を受けながらヘルパーの仕事をして、生活は決して楽じゃないけれど…元気に御飯を美味しそうに食べる孫のジョンウクが可愛くてたまらないミジャ。

ある日、腕の違和感で病院へ。
右腕がビリビリ痺れる。それを医者に伝えようと「ほら、あの、エネルギーの…」と、痺れを説明しようとするのに『電気』と言う単語が出てこない。医者は腕の症状よりも健忘症を心配する。

病院の外では若い母親が取り乱して泣いていた。救急車で病院に運ばれた中3の娘が亡くなったそうだ。
ミジャの足元で泣き崩れる若い母親。ミジャは、どうしてあげる事も出来ない。

ミジャは、バス停に掲示されていた文学講座のポスターを見る。『誰でも詩人になれる!』と書かれたポスターは募集〆切りを過ぎていた。でも以前から興味を持っていた詩作の世界に、無理に頼み込んで、文字講座を受講する事に。
課題は1人1篇の詩作に挑戦する事。詩に取り組む姿勢を先生に教わってミジャの日常は、詩作の糧に変わっていく。

孫ジョンウクの友達の、ギボムの父から電話があった。先日、亡くなった中3の子は、ジョンウクの仲間6人組が原因で自殺した、と聞かされる。
6人組の保護者同士で集まって、これからの事を協議。とりあえず示談に持ち込む為、慰謝料として3000万ウォン、1人500万ウォン(50万円位)を用意して欲しいと。そんな大金は用意できない。
ミジャの日常は音をたてて変貌していく。笑顔でお喋りしていたヘルパーの仕事も辛く重い。孫ジョンウクがテレビを見ている後ろ姿も見ていられない。

それでも気丈に振る舞おうとミジャは詩作のノートに言葉を紡いでいく。学校では亡くなった少女パク・ヒジン(洗礼名アグネス)の追悼ミサが行われていた。

500万ウォン。アグネスの遺影。ヘルパーの仕事。1人1篇の詩作の課題。孫と道端で遊ぶバトミントン。
誰にも心情を吐露できない闇がミジャに重くのし掛かる。それでもミジャは詩作をやめなかった💡

冒頭にアグネスの背中を映し出していた川に、ラストはミジャの背中を映して欲しかった。せめて帽子だけ、とか。
ユン・ジョンヒの鬼気迫る女優魂に拍手喝采したい✴
カント

カント