踊る猫

ポエトリー アグネスの詩(うた)の踊る猫のレビュー・感想・評価

4.4
「タテ」の関係に彩られた映画だ。アグネスは橋から飛び降り自殺という手段を経ないといけなかったし、その死体は奥(つまり画面的には上部)から手前(下部)へと流れて来なければならなかった。この映画は切り返しが多い。それは奥まった存在が手前に/手前の存在が奥にという上部/下部の入り乱れを生み出すだろう(横にふたりが対置する場面はこの映画では殆ど見当たらない。斜めならあるが)。主人公が詩を書くのもミューズが「タテ」に降りて来ることを暗示しているだろう。カメラから見て奥に居る存在が手前の存在に向かって話しかける……この「タテ」はそのまま、主人公がアルツハイマーを患うという形で記憶の「奥」を失うことの重要さを意味する(つまり「タテ」が持てなくなる)。あるいは「奥」に居たはずの警察官がストーリー展開において一気に全面に現れることも「タテ」の美学を象徴しているかのようだ。この映画、なかなかスルメのような味がある。
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