教授

ポエトリー アグネスの詩(うた)の教授のレビュー・感想・評価

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気取ったことを言えば、僕は、詩を読むように映画を観ている。
映画に「詩的」を感じるシーンがあれば…そういうシーンを感じたくて観ている。

その「詩」を映画、映像の力で物語る本作。
68歳のお婆さんが。人生で初めて詩を書き上げる。その為の詩作の旅なのか?それとも人生の意味を探る旅なのか?それとも…。
いくつも重なったレイヤーに、様々な動機や感情を挟み込み、善人に見える人が悪人にも見え、感じの悪く見える人にそこはかとない愛嬌が伺え、しかし、やはり食えない人間そのものの醜悪さが露呈したり、静かな画面に対して、せわしなく、そして途轍もなく重いドラマが展開していく。

生きることはクリエイティブであること=それが「詩」を生み出す。そして探し続けることで、「詩」を見つける。
しかしそれは、「失うこと」と等価なのだ。
「等価」であるからこそ、人は詩を求める。書くことを求めてしまう。
それは、人生そのものが、「失う」ことに他ならないからだ、ということを映画は、音楽のない画面の中で「見せる」ということで表し続ける。

主人公にとっての「失い続ける」ことを「詩を求める」ということと反比例させながら辿り着くラスト。
救いがあるようなないような、それでも映画としての最高の着地を見せる。
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