エリオット

ポエトリー アグネスの詩(うた)のエリオットのレビュー・感想・評価

4.5
録画放置ブルーレイを整理していたら当時イ・チャンドン作品だとも認識せずに録っていたお宝を発見しての鑑賞

冒頭、川を若い女性の死体が流れてくる場面から既に(語弊はあるが)美しい

今回は遠くで働く娘の代わりに中学生の孫を育てている初老の女性ミジャ(ユン・ジョンヒ)が主人公
ヘルパーの仕事をしながら少し派手な色使いの洋服を着るのが唯一の楽しみのような平凡な日々を送る彼女はたまたま通りがかりに詩のカルチャー教室を見つけて自分も詩を書いてみたいと思い立つ
ところが詩になる言葉を探して美しい風景などを見て回る彼女に突きつけられたのは自己のアルツハイマー病と孫が同級生の少女の自殺に関わっていたという過酷な現実

イ・チャンドンはそれでも彼女の苦しみや哀しみを口には出させず、孫との生活、介護の仕事だけでなくそんな状況でも詩の教室や朗読会に参加する姿を淡々と描く

もともと浮世離れしているうえにアルツハイマーが入っている彼女の突飛な言動や行動は、観ている者を苛つかせ心をざわつかせるが、実は誰より真っ当で自分なりの筋をきちんと通しつつ、クズみたいな孫のことも大切に思い、また、消えた少女の足取りを辿ってその心に寄り添うことで「詩」が生まれ出る後半は感動せずにはいられない
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