ほーりー

サンライズのほーりーのレビュー・感想・評価

サンライズ(1927年製作の映画)
4.3
「吸血鬼ノスフェラトゥ」や「最後の人」でドイツ表現主義の旗手として名を成したF・W・ムルナウ監督がハリウッドに召喚されて撮ったのが本作。

ストーリーは単純。都会から来たモダンガールの虜になった農夫は、彼女に唆されて自分の妻(ジャネット・ゲイナー)を手にかけようとする。

すんでのところでハッと我に帰る夫だったが、怯えた妻は都会行きの電車に乗り込み、夫もその後を追いかける。

その後、初めて見る大都会に田舎者の彼らは息を飲むばかり。やがて、それまで冷えきっていた二人の仲は次第に元の仲睦まじい関係へと戻っていった…。

もう、往来のど真ん中でキスしちゃう二人が何とも可愛らしいですね。周りはメチャクチャ迷惑だけど笑

移動キャメラ、ディゾルブ、ズームアップの多用など、サイレント映画(正確にはサウンドトラック付映画)におけるありとあらゆるテクニックを活用することで、一秒たりともダレを感じさせない傑作に仕上げられている。

何しろ、どの画にも奥行きを感じさせるような空間設計がちゃんとできている点、合成技術を上手く使って幻想的な世界を構築している点、登場人物たちの表情がまことに豊かな点、いずれも見事である。

そして、サイレントならでは、セリフの字幕にも趣向を凝らしているのも大きな特徴である。

ちなみに本作は第一回アカデミー賞の芸術作品賞を獲得した作品。つまり、たち位置としては作品賞(「つばさ」)より上であり、事実上のグランプリにあたる作品である。
ほーりー

ほーりー