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サンライズのKSatのレビュー・感想・評価

サンライズ(1927年製作の映画)
4.8
さて、とうとうこの映画を観る日が来てしまった。このFilmarksやTwitterのクソシネフィル野郎どもは皆、こぞってこの映画を絶賛し、オールタイムベストに挙げたがるため、そんな流れに乗るものかと敬遠していたのだが。

よくよく考えてみればさして凝った作りの噺でもないこの映画は、冒頭で自ら語るように実にシンプルな「歌」にほかならない。

多くの場合、映画というのは、その最も美しい瞬間がラストシーンに訪れる場合がほとんどだが、この映画の場合、全編に渡ってそれが訪れるため、多幸感が並大抵ではない。

夢幻的な二重写し、月の輝く湖でのキスシーン、市電の中から見える街の活気と車の動き、豪勢なデコレーションケーキのような遊園地、千鳥足になる豚、流れてくる葦...

これらのイメージはしかし、一枚の「画」として眺めてみてもさほどの効力はなく、映画による連続性がもたらす歓びがいかに偉大なものであるかを、我々に知らしめる。

トリュフォーの言うことに間違いはなく、確かに「最も美しい映画」と呼ぶにふさわしいのだが、それは作り手と観客の関係性にもいえることであろう。

控えめで奥ゆかしくも、人物をきちんと追うキャメラの動きが感動的であり、作り手と観客が被写体である二人を見守り、ともに映画を楽しんでいるような姿勢が強く感じられるのだ。これを映画愛と呼ばずしてなんと言おう。

朝日に包まれる二人の愛は儚げでありながらも確かな力を持ち、我々に、何かを愛さねばならないのだ、ということを静かに示すのであった。
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