杜口

サンライズの杜口のレビュー・感想・評価

サンライズ(1927年製作の映画)
5.0
もう、この映画を見てしまえばサイレント映画に対する無駄な偏見など吹き飛んじゃう。

サイレント映画というかそもそも古い映画全般、今の映画と比べてテンポ遅いよねと言った話はサンライズには通用しない。
90分という上映時間にこれでもかと展開が詰め込まれてる。
スリラーかのような冒頭。そして破局後、逃げ惑う妻を夫が追っていたかと思うと、豚を追う場面へと移り、いつのまにやらスクリューボールコメディかのような話に。と思えば、今度は悲劇的な話へと展開していき、その末に感動的な大団円を迎える。
もう、色んなジャンルがごったになって、次から次へとダイナミックな展開てんこ盛り。

撮り方も最高でして、建物や草花に隔てた人物の動きをするすると追った長回しのショットなど見事。今ではあまり見られない合成を使った夢心地なシーンもよきかな。
序盤からして動きに満たされ、走り、泳ぐ犬に漕ぐ人。これまた走る人に走る列車に車。それからも走る豚に走る人、踊る人。吹きすさぶ嵐に漕ぐ人、泳ぐ人。終いには感涙に走り抱きつく人人人。
どこまでもどこまでも動いて動いて躍動感溢れる映像に次ぐ映像。

いざ見終わってみれば驚く程の字幕の少なさにも気づき、見た者皆、サイレント映画の力を実感するに違いない。
はじめてのサイレント映画に是非是非。
杜口

杜口