すずき

ファントム・オブ・パラダイスのすずきのレビュー・感想・評価

4.3
超大物音楽プロデューサー、スワンのプロデュースするロックオペラ劇場「パラダイス」。
そのオープニング式には、無名ミュージシャンのウィンスロー・リーチの作った曲「ファウスト」を抜擢した。
だが、スワンは「ファントム」を、リーチに歌わせることはおろか、作曲者としてクレジットする事もなかった。
曲を奪われたリーチはスワンに抗議するが、逆に嵌められて無実の罪を着せられ、収監される。
彼は激怒し脱獄、レコード会社に侵入しマスターテープを破壊するが、その際にプレス機に挟まれ、顔を声を潰してしまう。
仮装マスクを着け、怪人ファントムとなった彼は、スワンへの復讐を成し遂げようとするが、スワンは彼に再び「契約」を持ちかける…

ブライアン・デ・パルマ監督の衝撃のロックミュージカル。
ミュージカル映画っても、キャラクターが演技の中で突然歌い出すアレじゃないから、そーゆーの苦手な人でも楽しめる…かも。

「オペラ座の怪人」「ファウスト」を現代風に換骨奪胎、結果ほとんど別物のオリジナリティ溢れる作品。
そこら辺の古典悲劇にオマージュを捧げつつも、実在の歌手のパロディみたいなギャグがあったり、ミュージカル演出が派手だからか、全体的な雰囲気は不思議と明るい。

前半の、リーチが抗議~ファントムになるまで、のくだりが爆速テンポで、ちょっと戸惑った。
けれどそこをしっかり描いちゃうと、音楽シーンが無いまま結構な時間食っちゃうから、超ミニマムにカットしたんだな。うーん、大胆。
そこからは話が二転三転して、先が読めない展開なのが良かった。

しかし、やっぱ主人公のファントム!
写真で見るとちょっとダサい…んだけど、劇中ではその異様な風貌がカッコよく見えるから不思議だ。
クライマックスの廊下を全力疾走するシーンが素敵。
あとマスク越しの眼力で感情を表現する役者の演技もスゴイぞ!

この映画での「大物プロデューサーとの契約」は、「ファウスト」でいうところの「メフィストフェレス(悪魔)との契約」なんだけど、しかしそれでも、「ビッグになる為なら、自分の全てを捧げて構わない」という信念でサインしちゃう所に芸能魔界の闇を感じた。