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フライトナイト/恐怖の夜のnetfilmsのレビュー・感想・評価

フライトナイト/恐怖の夜(2011年製作の映画)
3.7
 ネバダ州ラスベガス郊外の住宅地、高校生チャーリー・ブリュースター(アントン・イェルチン)は不動産屋を営む母親ジェーン(トニ・コレット)と2人暮らしだった。近所には幼馴染のエイミー・ペーターソン(イモージェン・プーツ)が住んでいて、気の良い隣人だったペリーはつい先日、どこかに引っ越し、隣家は売り家となっている。TVから流れるピーター・ヴィンセント(デイヴィッド・テナント)の人気番組。だが愛犬は空け放たれた部屋から何か殺気のような気配を感じ、身構える。次の瞬間、この家の少年アダムはベッドの下に隠れるがあえなく殺されてしまう。幼馴染のエイミーは学年一の美女になり、チャーリーもマークというイケてる友達に恵まれるが、幼少期に親友だったエド・リー(クリストファー・ミンツ=プラッセ)は相変わらずイケてないヲタクな世界にチャーリーを引きずり込む。うんざりする彼を尻目に、心配してアダムの家を見に行った2人は偶然にも事件の渦に放り込まれる。

 前作『ラースと、その彼女』では兄の母屋である隣の家に住む弟の部屋で事件が起き、処女作『Mr.ウッドコック -史上最悪の体育教師-』でも少年時代の最悪のトラウマを抱えるスパルタ教師が、母親の恋人になることで事件が起こったが今作もその距離感の短さは例外ではない。ペリーさんが引っ越し、売り家になった隣家にはあろうことかヴァンパイアで夜な夜な殺戮を繰り返すジェリー・ダンドリッジ(コリン・ファレル)が越して来る。父親は既に2人の元を去り、1人っきりの母親はセクシーな眼差しを見せるジェリーの姿に満更でもない表情を浮かべる。思春期真っ只中で童貞のチャーリーもまた、親友エドとの付き合い方に苦しみ、恋するエイミーとの関係に悩むモラトリアムな少年である。『Mr.ウッドコック -史上最悪の体育教師-』でスパルタ教師が、『ラースと、その彼女』で物言わぬラブドールが主人公のイニシエーションの主題を纏わせたのと同様に、今作でもヴァンパイアはチャーリーの首筋を噛むことをせず、一家の大黒柱として頼りない少年に奮起を促す。「ヴァンパイア撃退術」でラスヴェガスの人気を得たピーター・ヴィンセントはチャーリーと合わせ鏡のような人物であり、代父ともなり得る。土から生まれる種族の侵攻に争うロマンチストと現実主義者の動向に目が離せない。トム・ホランドのオリジナルに忠実ながら、そこはかとなくギレスピー節の冴えるグッド・カヴァーに笑みが滲む。
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