このレビューはネタバレを含みます
題名のマンディンゴは、正式にはマンディンカ族という西アフリカの部族名で、劇中では頑健であり高値で取引されている。
1840年代のアメリカはルイジアナ州でファルコンハースト・プランテーションを営むウォーレン・マクスウェルは、農作というより奴隷売買で生計を立てており、リウマチを患って自由に動けぬ代わりに切り盛りする息子のハモンドは奴隷に夜伽をさせるばかりで、後継者になる白人の孫の顔をみたいと従妹であるブランチとの婚姻を取り決めた。
ブランチには秘するものがあったが、初夜にハモンドは気付いてしまい落胆してしまう。
花嫁を迎えにいく途中、立ち寄った農園で充てがわれた黒人の娘エレンを愛妾として買い求め、邸へと連れ帰る。
一方、農園にいるマンディンゴの娘パールとの間に子を産ませる為同族の男子を熱望していた父親の願いを叶えるべく、ミードを競り落としたハモンドは、拳闘士として鍛えあげるのだが…。
凋落の影のさす荒んだ大邸宅で、愛と憎しみが嵐となって逆巻くッ―――!
メイド長さんに主人が、何気なく何人子供産んだ? の質問に、24人と答えて、えッ! と思ったのも束の間、その後展開される主人たちの所業に、もはやツッコむ事を早々に諦める羽目になる。同じ人間としての共通項は、息吸って吐く、飯食って寝るくらいのもんです。
『風と共に去りぬ』を痛烈にディスっているという本作ですが、私は当該作品を観てません。ポスターもパロってるそうです。
坂道を転がり落ちるように、ああ、こうなって欲しくないなって方に進行する物語。
のどかな劇伴が白々しい…。
ハモンドの優しさは博愛なんて綺麗な物でなくて、劣等感からくるネバつきドロついた物に思えて、案の定言葉にして吐き出す始末。
後ろに父親のミードを控えさせ、赤ん坊を前にウォーレンが言い放つ。
“どの赤ん坊も黒い虫にしか見えん”
“あの子なら3000ドルで売れるだろう”
絵画のような美しい構図のショットも毒々しく見え、ラストのカタルシスも不快感を残すため、計算されていると思われました。
と、批判ぽく書いちゃってますが、パゾリーニ先生の『ソドムの市』でもらった退廃美のレンズで透かし観ると、評価は見事に反転しまして、重い題材を軽んじない所も良いし、タランティーノの『ジャンゴ』のラストもより映えて見えるだろうと思いました。
ミードを演じたケン・ノートン氏は、何処か役者ばなれした魅力あるなあと思ってたら、元WBC世界ヘビー級チャンピオンで、モハメド・アリと3回闘い1度は破った方。『ロッキー』のアポロに内定していたけども、都合によりカール・ウェザーズへ変わったとのこと。
さらにラウドミュージック党の私のYouTubeのホーム画面にNYヒップ・ホップ・レジェンド WU-TANG CLANの新曲『Mandingo』のMVが届きまして、観てみますと曲の良し悪しは語る立場にありませんが、MVは『ベスト・キッド』や『死亡遊戯』『キル・ビル』(と言ってもおそらく大元のショー・ブラザーズのクラシックなカンフー映画だと思われます)みたいなブラックスプロイテーション剣戟カンフーアクションのショート・ムービー風で、格好良かったです。
メンバーのMethod Man氏、この間『シャフト』(2019)でお会いしたばかり。
こういう謎のリンクも面白い。