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フィッシュタンク〜ミア、15歳の物語のRのレビュー・感想・評価

4.5
完全にグレてしまって学校にまったく行ってない、ふてくされて、つねにイライラしてる15歳の女の子ミア。それもそのはず。シングルマザーの貧しい家庭で、若いママの生活はむちゃくちゃ。酒飲んで友達と騒いで男とファックして。それだけ。やから、ソーシャルワーカーがやって来て、特別学校への誘導を試みようとしても、ミアはさっさと逃げて行ってしまう。自分の思い通りになることが何ひとつない彼女にも、ひとつだけ好きなことがある。それは、ダンス。こっそり家で練習してて、お世辞にも上手いとは言えないが、地元のダンサー求人のオーディションに興味を持っている。ある日おかんの新しい彼氏がうちにやってくるんやけど、これがセックスが全身から染み出してるようなイケメン。マイケルファスビンダー。で、ミアもこいつのことが気になってしょうがない。最悪な家庭環境のなかで、彼だけがミアに優しくしてくれる。そりゃ惚れてまうわ。それがある日、あっ!ついに!って状況になっちまい、そっから、ああああ!何てこった!な展開に。ただ、それは特に驚くべきことでもなくて、結局どこにでもありそうな話やねん。だからこそ、哀しいし、リアリティがある。全体的にヒリヒリするようなリアリズム演出が貫かれてて、手持ちカメラで常に画面がグラグラ揺れてる。それが瞬間瞬間の、ミアの揺れに揺れるエモを、鷲づかみにとらえていく。そんな中、ちょいちょい馬やら魚やら風船やら、シンボリックな演出が加わって、それがおおいに映画的な豊かさになっている。てか、ガキンチョども、口汚いわ、タバコは吸うわで、とんでもねーし、ほんまにちっさい子にも、とんでもない演技させてて、あるシーンでは内容的にも演出的にも心底ひやっとした。荒れ果てた世界にがんじがらめで、身動きがとれないミアが、愛を、自由を希求する、その切実さに大きく心揺さぶられる。この世界において、真の意味で自由を謳歌し、常に歓喜を味わいながら、生き生きと生きている人間は、おそらくひと握りもいないだろう。みな、自分の周りの環境や状況や、自分が自分に定める限界にがんじがらめで、もやもやした不満と諦観を抱きながら生きている。仮に、あるどうしようもない環境から抜け出すことができたとしても、結局、人間は自分の宿命からは逃れられない。ミアのような若者は世界にあふれるほど存在しているはずだ。そんな若い人たちに、是非とも、自分に目覚め、自分を開き、自分を貫ける人生を送ってほしいと、祈らずにはいられなかった。ラストシーンはほんとに感動した。すばらしかった。つらい映画だけどまた見たいと思った。そして最後のNaS、最高やった!
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