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サラエボの花の一のレビュー・感想・評価

サラエボの花(2006年製作の映画)
3.5
『アイダよ、何処へ?』のヤスミラ・ジュバニッチ監督デビュー作

2006年ベルリン国際映画祭の金熊賞受賞作

ボスニア内戦から12年の時を経たサラエボを舞台に、戦禍の傷である秘密を心の奥に抱えて生きざるを得ない母と、家族の真実に向き合う娘の再生と希望を描く

紛争の傷跡が色濃く残るセルビアで、毎日の生活の為に貧困に苦しみながらも懸命に生きる人々
直接的な描写もなく、それほど起伏もない暗く静かな物語ですが、このシングルマザーの母娘を通し、紛争というものの悲惨さが痛いほどに伝わってくる

時折挟まれる主人公が精神的に不安定になる描写が悲惨な紛争の爪痕そのものを表しているので、彼女がどれほど辛い経験をしたのかというのはすぐに察する事ができます
しかしそれほど深く深く傷つきながらも、たったひとりの娘を愛するという純粋な気持ちは、かけがえのないほど美しく見えました

この母と娘二人の自然な演技が、苦しすぎる物語の説得力をぐんと高めてくれる
中でも、時に年ごろの娘と衝突する二人のやりとりがめちゃくちゃリアルで観ているだけで胸が苦しくなるけど、それでもあのラストカットにどれだけ救われたことか…
哀愁漂う民謡のような歌声も胸に響く
金熊賞も納得の作品だと思います

〈 Rotten Tomatoes 🍅98% 🍿86% 〉
〈 IMDb 7.2 / Metascore 71 / Letterboxd 3.5 〉

2021 自宅鑑賞 No.468 GEO
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