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サラエボの花のクリームのレビュー・感想・評価

サラエボの花(2006年製作の映画)
4.0
昔から一度観ようと思っていた映画。戦争を扱った映画で、ボスニア紛争の10数年後の人々の苦しみを描いた作品。戦争は終わった後も爪痕は癒える事は無く墓場まで続き、当事者の子孫にまで根深く続いて行く。もの凄く苦しい映画でした。が、踏みつけられても生きて行く女性達の強さや優しさが詰まった素敵なお話でした。映画本編で、痛ましいシーンが出て来ないのも良かったです。




ネタバレ↓




昔観た『ある愛へと続く旅』を思い出した。私は、この映画と『カジュアリティーズ』のレイプシーンが思い出すのも嫌なくらいトラウマ級なのだが、前出の作品は、今作と同じボスニア紛争時のレイプ。恐らくエスマも同じ様な環境下だったのではないかと思うと胸が締め付けられます。
後で知ったのですが、ボスニア紛争時のレイプは、 民族浄化の手段のひとつで、女性たちを妊娠させて、産むしかない状態になったら解放していたそうです。 おぞましい限りですが、見るのも嫌だと産んですぐに殺してしまう人もいたらしいです。
エスマは、優しく強い女性です。私ならサラを育てられたかどうか自信がない。サラの立場でも大好きな母を苦しめた忌み嫌うべき血が自分の中に流れていると思うと正気ではいられないし、自分の存在自体、呪いたくなります。かなり、序盤でストーリーの想像はつきましたが、女性達が逞しく、助け合って生きている姿に少しだけ救われました。あってはならないし、憤りしか感じないけど、実際に起きている出来事。人は、それでも生きて行かなければならない。一緒に生きて行く家族がいる事、友、仲間がいる事は、どんな形であれ救いになるのだと思いたいです。
サラを見送るエスマの笑顔が、凄く素敵でした。このシーンが、この映画の伝えたかった事なのでしょう。エスマは、サラの喜ぶ顔が見たくて頑張って生きているお母さん。二人は、どこにでもいる普通の親子で、サラはエスマの生き甲斐となっているのだと。悲しいだけで終わらせない良い映画だったと思います。
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