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サラエボの花のcamusonのレビュー・感想・評価

サラエボの花(2006年製作の映画)
4.0
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(1992~1995年)から
約10年が経過したサラエボが舞台です。

凄惨を窮めた戦時の描写はあえて行わず、
今なお続く、人の心に残る傷痕に焦点を当てています。
母娘の関係、母娘それぞれの人間関係、恋愛などを描きつつ、
母vs娘のクライマックスに持って行く流れが、
ごく自然で巧みです。

静かで間接的な表現が多いため、
初見では、今ひとつピンと来なかったのですが、
結末を見た後に、背景に関する知識を入れてから見直してみると、
なるほど、なかなか細やかな精神描写を見て取ることができます。

エンディングは、過去を断ち切って前に進んでいこうとする
強さみたいなものが感じられて、すがすがしかったです。

監督は女性で、製作当時30代前半と若いのですが、
人物の描写に熟練を感じさせます。いぶし銀です。
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