TaiRa

空の大怪獣 ラドンのTaiRaのレビュー・感想・評価

空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画)
5.0
今じゃ他の怪獣に比べて地味なポジションにいる気がするけど、これ相当傑作ですよ。

阿蘇山近くの炭鉱から古代の巨大生物が出現するという話だが、まず最初に出現するのが人間を片っ端から惨殺する巨大ヤゴのメガヌロンっていうとこが好き。前半は主にホラーテイストで、禍々しいムードが漂ってる。殺された炭鉱夫の遺体を「皮一枚で繋がっただけで首がほぼ取れかけてた」みたいに言葉だけで説明するのが逆に怖い。主人公たちが家にいるとヌッと庭からメガヌロン出て来るのも唐突かつ距離が近過ぎてめちゃくちゃキモい。追い詰めたメガヌロンにトドメを刺しに行く警官二人が道連れに殺されるのもヤバい。ラドン登場からは戦闘機との空中戦や博多を火の海にする大破壊など、特撮技術の素晴らしさが目立つ。街のミニチュアと破壊の精巧さは、それまでの怪獣映画からワンランクアップした感じ。ラドンを自然の象徴として描き、人間の自然破壊の残酷さを見せる終盤。巣を攻撃する作戦会議で地震学者が阿蘇山の噴火を誘発すると提言する場面のやり取りが肝。「噴火したら山麓の被害は」「住民は避難させる」「それだけじゃない、森林や田畑は…」「ラドンが生きてる限り被害を被り続ける」「……」という会話のあと、避難する住民、主人公とヒロインが美しい緑の大自然を背景に会話を交わす場面が入る。自衛隊の攻撃によって破壊される山や森の描写もやたら丹念に見せる。最後につがいのラドンが噴火した阿蘇山に落ちて絶命するのは撮影時の失敗から生まれた展開だが、怪獣の死を映画史上最も悲壮に描いた名場面。ここは音楽も本当に素晴らしい。怪獣の死が必ずしもハッピーエンドではないという基本の基。
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