MASAYA

ドライヴのMASAYAのレビュー・感想・評価

ドライヴ(2011年製作の映画)
4.6
【800本記念】

綺麗な『トランスポーター』を見たような、『LEON』を見たような、はたまた韓流映画の『アジョシ』を見たような、そんな複雑な気持ちになります。

表の顔はハリウッドのスタントマン。しかし裏の顔はルールには厳しいが、仕事を確実にこなす寡黙な運転手"ドライバー"。

そんなドライバーが同じアパートのアイリーンに恋をする。車の修理をきっかけにアイリーンと彼女の息子べニシオとも親しくなってゆく。
しかしある日アイリーンの夫スタンダードが服役を終え戻ってくる。スタンダードは服役中に多額の借金を負い払えずにいた。そのため、とある強盗の依頼を断れば妻と子の命はないとマフィアに脅されるはめに。
絶体絶命のスタンダードの事情を知ったドライバーはアイリーンとベニシオを守るため夫を助けようとするが、それが引き金となりマフィアの抗争に巻き込まれていく……

とにかく大好きな作品。クールでスタイリッシュなストーリーや音楽が素晴らしいのはもちろん、何より演出が素敵。

名前も過去もわからない謎の存在で2面性を持つドライバーを象徴したかのような様々なコントラスト。物語の大部分を占める「静」とゲリラ豪雨のように激しく瞬間的な「動」、「光」と「影」、「ラブロマンス」と「バイオレンス」。気づけば見惚れていた。

この作品を代表する場面とも言えるのがエレベーターでのキスシーン。暗転からの煌々と光が満ち溢れていく中での静かで長いキス。そこから突如降り注ぐ容赦のない暴力。何ともまあエッジが効いている。

あとはドライバーが着ているサソリのスタジャンに隠されたメッセージに魅力を感じた。

血の気の多いギャングの幹部ニーノを海で溺死させ、彼の相棒であるバーニーに電話をする場面でドライバーはこう言う。
「ニーノは川を渡れなかったぞ。」

この台詞にはドライバーも口にした『サソリとカエル』という寓話が背景にある。どういう話かというと

~サソリとカエル~
川を渡りたがっているサソリがカエルに頼む。
「背中に乗せてくれよ。」
カエルは言う。
「君を乗せたら僕を刺すに違いない。」
サソリは答えた。
「僕が君を刺したら両方とも溺れてしまうじゃないか。」
カエルは納得し、サソリを背中に川を渡り始める。
けれども半分まできたところで強烈な痛みを感じ、自分がサソリに刺されたことに気づく。沈んでいくサソリとカエル。
カエルは叫んだ。
「サソリ君なぜ僕を刺したんだ?自分も死ぬと分かっていながら。」
サソリは答えた。
「仕方がないんだ。これが僕の性(さが)だから。」

おしまい


この寓話を踏まえると、ニーノがカエルに例えられていること、ドライバーがサソリのスタジャンを羽織っている意味がよく分かる。敵を殺したのも、自分の身を削ってでもアイリーンを守ろうとしたのも、二面性でさえもそれこそが彼の"性"だったのだと。何とも哀しいサソリの"性"を背負った男、ドライバー。カッコよすぎて痺れる。

サントラも絶妙なチョイスで
静謐なこの作品を引き立てている。『Under your Spell』もよいけど、やはり一番はエンディングでも使われている『A Real Hero』かと。

どうやら自分はルールは絶対みたいな仕事人が実は情に深く、自分を犠牲にしても他者を守ろうとする話に弱いみたいです。

終わり方も謎めいていて魅力的です。ドライバーこそまさに"Real Hero"。決して明るいとは言えないこの作品のイメージカラーがピンクというのは、おそらく暗闇の中で生きてきたであろうドライバーの"ヒーロー"の一面を象徴付けているのではないでしょうか。
暗いトーンの背景に映えるピンク……美しい。

A real human being
And a real hero♪