むさじー

ドライヴのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

ドライヴ(2011年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<サソリの性を背負った男のラブ&バイオレンス>

結構重いクライムサスペンスに、ラブロマンスの味付けをしているのだが、あまりに暴力描写が過激なので、恋愛ドラマが霞んでしまった感がある。
無口なヒーローは常に“静”を貫いていて、その静かな慟哭は、一途で残虐な行為に急変する。
その静寂と“間”が緊張感に満ちていて、雰囲気は『タクシードライバー』『ノーカントリー』に近い。
愛する女性に出会い、新たな人生を夢見ながら、裏社会のしがらみから死地に赴くドライバー。
そのドライバーの口から、“自分の性(さが)”で夢を壊してしまう「サソリとカエル」の寓話が語られる。
たとえ自分が死ぬことになっても、愛する人を守りたい。そうせざるを得ないのは、それが自分の性だから。
いや違う。自分でも抑えきれない凶暴な本能を自覚していて、やがてはカエル(愛する母子)を不幸にしてしまうから。
それとも、彼自身がカエルとして生きようとしながら、背負ったサソリの性で自滅していくという解釈か。
いずれにせよ、エレベーターでの惨殺シーンの意味するところが、関係を壊してでも女性を守りたいという強い意志の表れ、いやむしろ別れのメッセージであるような気がする。
やはり純愛映画であり、スタイリッシュな任侠映画である。
むさじー

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