竹

さらば、わが愛 覇王別姫の竹のネタバレレビュー・内容・結末

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

170分と長いものの、一気に引き込まれて観てしまう名作だった。
とにかくレスリー・チャンの演技が凄い。これだけでも観る価値があったほど。

京劇の煌びやかさとは逆に、ストーリーはドロドロしていて重い重い。
大好きな小楼とペアで役者として成功し、片想いしつつも幸せそうな蝶衣が、時代に取り残され急激に転がり落ちていく様が見ていてひたすら辛かった。
それでも京劇と小楼から離れられない蝶衣が更に辛い。菊仙も強かながら悪人ではないと分かっているけども、蝶衣視点だと泥棒猫にしか見えず。中盤以降の京劇のシーンで度々「あの頃は良かったのに」と序盤を思って悲しくなってしまった。
自己批判のシーンの蝶衣は、悲しくもあり、いっそ清々しくもあった。
ただ、小楼がすぐに蝶衣を批判し始めたのは残念。そこはもっと抵抗してくれよ…と思うのは蝶衣に肩入れしているからかもしれないが。
姫を捨て妻を捨て、幼少期の包容力や逞しさはどこへやら…そこまで執着するほどの男か?と思わずにはいられない。
小説版とは真逆らしいので、なおさら残念。人間の弱さ脆さを描くにしても、何もそこまで小者にしなくても…。

ラストの台詞の言い間違いを指摘されるシーンは何度見ても胸が痛む。
年齢による衰えを感じる小楼と、昔と変わらず美しい蝶衣の対比がまた辛い。
小楼が手に入らないと知り、項羽に愛される虞姫のまま京劇の中で死んだようにも見えるが、蝶衣が数十年ぶりに舞台を降りられた救いのシーンでもあると感じた。どちらにせよ悲しいだけの最期ではない気がする。
蝶衣の京劇人生と、空白の11年間を想像すると色々こみ上げてきて、エンドロールで泣いてしまった。
だらだらと纏まらないが、とにかく良い映画に出会えて良かった。
竹