マヒロ

ポパイのマヒロのレビュー・感想・評価

ポパイ(1980年製作の映画)
3.5
船乗りのポパイ(ロビン・ウィリアムズ)は、幼い頃に行方不明になった父を探して小さな港町スウィートヘヴンにやってくる。よそ者を警戒する町民にポパイはなかなか馴染めないでいたが、そんな中、町の有力者・ブルートと半ば無理やり結婚させられそうになっていたオリーブ(シェリー・デュヴァル)と出会う……というお話。

あの『ポパイ』の実写化で、コミック映画とは縁遠そうなロバート・アルトマンが監督を務めている。
マルタ島に建造されたというスウィートヘヴンの町はテーマパークみたいなチープさもありつつ、船の汚れ具合とかはけっこう徹底されていて美術は良い感じ。

問題……というか良い点なのか悪い点なのか最早分からないが、この映画の凄いところはコミック映画の演出をそのまま実写でもやってしまっているというところで、ぶん殴られた人がドリルみたいに回転しながら床を突き破ったり、100メートルくらいの距離をゴロゴロ転がっていったり、生身の人間がガチでコミック仕草をしているのに圧倒される。ポパイのあの特徴的な膨らんだ手足もわざわざ特殊メイクで再現しており、割とキモチワルイ。
ただ、映画全体が何となくそのドタバタ感に乗り切れていない感じもあり、起こってることの熱量は凄いのに映画の体温は低いみたいな絶妙に噛み合わないもどかしさがある。一応ミュージカル映画ばりの歌唱シーンも多いが、皆等しく微妙にヘタだったりする辺り、ちゃんとした娯楽作品からちょっと外そうとする、アルトマン監督のひねくれ根性が働いた結果変な雰囲気になってるのかなと思えた。ただ、この歌の下手さは「味」になっていてよかったと思う。オリーブの歌う『he needs me』は、ポール・トーマス・アンダーソンの『パンチドランク・ラブ』にも使われていたらしい(覚えてないが……)。演じるシェリー・デュヴァルは、あの『シャイニング』と同年とは思えないクネクネした力の抜けた演技が魅力的で、この世界観に一番マッチした存在感で良かった。

あからさまに変な映画ではあるが、マジで変な映画を作ってやろうとしてるのか、結果的にそうなってしまったのかどっちが本来の姿なのか何とも言えない作品で、面白いんだけど何となく魂が入っていないような気がしてしまった。

(2021.257)
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