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バタリアンのdm10foreverのレビュー・感想・評価

バタリアン(1985年製作の映画)
3.8
【ゾンビが人気者になった瞬間】

ちょっと語弊がありますね、ゾンビはどこまでいってもゾンビなので特に人気者になったりはしないですね(笑)。

ただ、「死者が蘇って生きている人を襲う」というプロットを「大衆娯楽型」のような形で投下して、それなりに成功したユニークな作品だと思います。

この映画が公開(1985年)される直前の1983年に世界中でもっとも注目されたショートムービーがありました。
皆さんご存知マイケル・ジャクソンの「スリラー」です。
あれはゾンビやら狼男やらごちゃ混ぜで「怪物くん」のような世界観ではありますが、それでも「ナイトオブザリビングデッド」の世界観が正統派な向きで再現されていて、とてもMVとは思えない完成度でした。

その後に発表されたこのバタリアンは「ナイトオブザ~」のパロディ的な色合いが強く、似たようなプロットでありながらスリラーとは対照的な作品になっています。
バタリアンは前提として「ホラー」ですので当然苦手な方もいるでしょうし、ちょいちょいグロいシーンも出てきますが何故か微笑ましくも見えてしまいます。これは「ホラー」であると同時に「コメディ」的な要素も多分に含んでいるため、描写の割りにはとてもライトな作りになっているからなんじゃないかなと思います。

ゾンビ映画における「恐怖」とはとにかく『「個」ではなく無数の群れで無秩序に襲ってくる』ところにあります。
倒しても倒してもどこからともなく沸いてきて、徐々にこっちが追い詰められてしまうという。
そこにはゾンビ毎の「個性」は極力排除されています。
中には「さっきまで仲間だった人がいつの間にかゾンビになっている」というような意味を持つキャラクターとしてのゾンビはいますが、どちらかというと「展開上触れておくべき点」として描かれる場合が多いですよね
(「あぁあんないい人がゾンビにぃ~」みたいな)。

ところがこの作品では「タールマン」「オバンバ」など個性的なキャラクターを存在させるのです。
それも「出会った人間を全て殺してしまう級」の殺人マシーンでもなく、なんならゆる~い感じのキャラクターなんですね。
「閉じ込める」とか「縛る」とかで対応出来ちゃうくらい(笑)。
でも見た目はバリバリのゾンビなんですね、そこらへんの絶妙なバランスが逆に面白くて強烈に印象に残りますね。

 展開的にはおバカな登場人物たちが徐々にどうにも出来ない事体に巻き込まれていく様を描いているため、時折挟まれる「コメディテイスト」が逆に状況の悪化を知らしめるというスパイスにもなります。
「面白いけど怖い」
「怖いけど面白い」
これらは本当に表裏一体なんだなと感じましたね。

個人的にはラストは最高のブラックジョークでした。
コメディ要素が一切ないゾンビ映画であったなら「最悪のエンディング」と言換えれますが、この作品に関していえば、事態がどんどん悪化していって、もう人間の手にはどうにも負えなくなってしまって「あ~もう!」って感じですよ。
とりあえず吹き飛ばしちゃえみたいな。物事の後先なんか考えず、めんどくさいから「えぃ!」みたいな感じで。

このあとに何作か続きましたが殆ど観てません。2は観たかな?でもあまり覚えていない。
そんなもんなんです。
この「バタリアン」のインパクトって簡単には超えられないんだなと感じましたね。
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