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見えない恐怖のHKのレビュー・感想・評価

見えない恐怖(1971年製作の映画)
3.8
『ソイレントグリーン』『マンディンゴ』などのリチャード・フライシャー監督によるサスペンス映画。キャストはミア・ファロー、ドロシー・アリソン、ロビン・ベイリーなどなど

とある大邸宅に家族と使用人と幸せに暮らしている盲目の女性がいた。彼女は競走馬の厩舎を管理している彼氏と共に一日停泊していたのだが、帰ってくると、邸宅の様子がいつもと異なっていた。いつもよりも静かな邸宅には、何者かによって惨殺された彼女の家族の死体が転がっていたのだった。

リチャード・フライシャー監督による傑作サスペンス映画の一つ。サスペンスの演出を最大限に活用するキャラクター配置とカメラワークがとても面白かったですね。

今作のキーポイントはずばり『足』、黒幕である殺人鬼の特徴として観客に提示されるのは、膝から下のジーンズとブーツのみ。後半になるとブレスレッドなども提示されるが、基本的に犯人の特徴は最後まで足元しか映されない。

そして、もう一つこの映画にサスペンス要素を加えているのが主人公が盲目であるということ。これによって、主人公の足元が不安定になる文、より足元を強調することの重要性がまします。

割れたガラスが地面にまき散らされて、犯人はブーツを履いているのに、主人公のミアファローは常に裸のために、気づかずに踏んでしまうなど、ここでの驚かせなどもとても良くできていたと思いますよ。

初めは邸宅という閉鎖空間を利用して密室サスペンスだと思わせながら、物語は思わぬ展開に入る。彼女は無事に邸宅を馬に乗ることによって回避するのだが、それによって余計に袋小路に迷い込んでしまう。

それまで慣れ親しんだ家の空間ではある程度は自由が利いたものの、全く見覚えのない空間では悪戦苦闘する様が面白い。途中、納屋に閉じ込められてしまうシークエンスでは見事に脱出するのですがそこはお見事でしたね。

映画冒頭のクレジットから犯人らしき人間の足元を映す。そしてクレジットが全部終わってついに映画が始まって間髪入れずに家族が乗ってる車が水をブーツにかけて因縁をつける。というのが面白いですね。

犯人に対するアプローチはほとんどせずにひたすらなぜあんな虐殺をしたのかという理由も提示せずに、最後は見事に突き放すように終わる所が見事だと思いましたね。

それでいて、最後のワンカットで当時の貧困層、それこそジプシーたちに対する差別なども含めた問題意識、経済格差の問題を僅かながらに提示するというショットで幕を閉じるのが見事だと思いました。

最後まで一級品のウェルメイドな極上スリラーだと思いますよ。いずれにしても見れて良かったと思います。

しかし、泥だらけになったりするなど、今作はミアファローがかなり体を張っていてすごかったですね。なんか日本でいう所の大竹しのぶみたいな人ですねこの人。
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