黒羊

機動戦士ガンダム II 哀・戦士編の黒羊のレビュー・感想・評価

4.8
「劇場版機動戦士ガンダムII哀戦士編」

劇場版機動戦士ガンダム三部作の中でも、最高傑作と名高い二作目。一番人間ドラマを描いています。

【平和を願いながら、なおも戦い続ける、永遠の人間群像】

地球連邦軍サイドでは、偶然にも徴集されてしまった民間人アムロ・レイの戦士としての目覚めや、軍幹部も予想しない戦果を上げる、アムロが所属する第13独立部隊「ホワイトベース隊」のクルーの生死が描かれる。

【戦場の砂塵だけが、彼らの死を葬ってくれるのか…】

ジオン公国軍では、ホワイトベース隊を追っていたシャア・アズナブル少佐は甚大な損害を出し、失脚。他幹部の直属の部隊から「青き巨星」ランバ・ラル隊や、「黒い三連星」のエースパイロット隊がホワイトベースを追う。


哀戦士編というだけあり、戦争の中でも登場人物の喜び悲しみが数多く描かれている。
人物達は皆「戦う理由」を持っている。
強く敵(ライバル)を認識し、勝ちたいと願う者、生き別れた家族を追う者、心通わせた異性を無くし、その悲しみをこれ以上生まない為に敵を叩く者、補給部隊の使命を全うする者、軍人として、部下を養いたいたいと思う者、連れ添った相手の敵討ちの為に戦う者…

彼らの、それぞれの生き様がテーマソングの「哀戦士」に乗せて描かれる。

ジャブロー地下での、アムロの駆るガンダムと、カスタム機体シャア専用ズゴックの宿命の対決シーンは手に汗握る、お互いが「ニュータイプ」に覚醒しつつある戦闘はいつ観ても最高のシーン。

平和を願い掲げられたニュータイプ理論は、戦争の中では道具、実験材料として活用される…なんたる皮肉。戦争の狂気。

ここまでの人間ドラマを、反戦・戦争ドラマを描けた事が、「ガンダム」の人気を支えたと。プラモデルやゲーム、キャラクターやメカデザインだけじゃない、数えきれない名セリフや、両陣営に魅力ある人間たちを描けた事が、1978年のテレビ放映(当時は不人気で放送打ち切り)から、ファンの心を掴んで離さない要素があると思う。

連邦軍本拠地から引き続き、囮り、陽動に使われる「ホワイトベース隊」は敵の拠点へと向かう為に宇宙に上がる。それを追うシャア大佐の部隊。

激闘の果て、彼らを待つのは生か死か。
「めぐりあい宇宙(そら)編」へ続く!
黒羊

黒羊