ハリ

天使のくれた時間のハリのネタバレレビュー・内容・結末

天使のくれた時間(2000年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

「もしあの時ああしていたら」というifストーリーの奇跡がクリスマスイブに起こる。
お金で解決出来るものは全て手に入れたジャックと13年前に自分のキャリアの為に別れたケイトとの物語。

13年前に別れなかったもう1つの世界線での一時の生活を描いている。
自分がただ1つだけ手に入れられ無かった愛する人との生活に最初は戸惑うが、本当に大切な物はお金では無く愛だと気付く。

13年前に空港で別れなければキャリアと引き換えに愛を手に入れることが出来ていた。天使が見せてくれた世界で束の間だが幸せな時間を堪能することができ、同時に自分の本心とも向き合うことが出来たジャック。

この奇跡から現実に戻る時間が近づいていることを察して夜通しケイトの顔を眺めているシーンはかなり心にきた。本来交わることの無かった子供達との交流。最初は偽物のパパと言われていたが終盤で「おかえり、パパ」と言われるシーンは心暖まるシーン。

現実の世界線ではケイトも仕事人間で家庭を持っていない。仕事の為にパリ行きの飛行機の搭乗口でジャックがケイトを引き留めるシーンは冒頭のシーンとの対比として描かれていた。

今からでは13年間の生活を取り戻すことは出来ない、関係性も変化し、2人の子供や幸せな生活を手に入れることは出来ないかも知れない。それを分かった上でケイトとなら失った時間以上に大切な時間を共有出来ると確信し引き留めたのだろう。大切な物はキャリアや富では無く愛する人との生活だと…。そしてそれはケイトも同じ気持ち。でなければ振り返ったりはしなかった。

ラストではエンドロールと共に雪の降る空港でコーヒーを飲みながら語り合うシーンで終わる。なんとも素敵な終わり方。

この物語のテーマは…
人生は無い物ねだりであり、いくつもの選択で人生は決まっていく。欲しいものが全て手に入るとは限らないから、自分にとって本当に大切にしなければいけないもの、そして自分にとっての本当の幸せとは何かを理解する必要性を問いてるような映画だと感じた。

このテーマのもう1つの側面として…
生きる目的を見いだし、現実世界に戻して欲しく無いというジャックに対して天使は

「煌めきは長く続かない」
と言い切る。これは

゛楽しい日々は終わり、現実世界に帰る時間だ゛

という意味では無く、

゛どっちの世界でも最初は煌めいている、煌めきの人生ばかりでは無い゛

という意味だと思った。同じ生活を毎日繰り返すにつれて新鮮味は薄れていき、手放した物が綺麗に見えたりもする。その時こそ今一度、自分の中で1番煌めきを放っているものを見直さなければ同じことの繰り返しになるという忠告の言葉にも聞こえた。

なぜ天使がこの時間をくれたのか?目的は?現実世界に戻した理由は?ファンタジーな物語なので深く考えないがこの辺が曖昧なまま終わってしまったので少し不完全燃焼。
個人的評価:名作
ハリ

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