ちろる

パパにさよならできるまでのちろるのレビュー・感想・評価

パパにさよならできるまで(2002年製作の映画)
3.4
話は全く違うけれど、雰囲気がなんだかギリシャ版「ニューシネマパラダイス」みたいなかんじ。
主人公のイリアス役の子の子供らしい幼さがトトを思い出させた。

物語は父を深く愛する主人公イリアスが父親の死を自分なりにゆっくりと受け止めるまでのお話。

行商に出て家に居ない父と、母の夫婦喧嘩の耐えない日々。決して完璧な幸せ家族とは言いがたい家族の形。でも母親の苛立ちは本当は夫を愛してやまないから故のもの、そんな母を守ろうとする、ぶっきらぼうだが心やさしい兄。

崩れそうで崩れない、「愛」という糊でなんとか耐える家族像がとてもリアル。
両親の喧嘩の日々も大好きだった父の死も、まだ10歳のイリアスにはあまりに辛い。

子供には現実の世界と逃避できるもう一つの世界があって、彼はいつもそこに逃げ込みながら父の死を自分なりに現実にしていこうとする過程があまりにも切なかった。

深く夫を愛して求めていた母親はにっとっても、実はそんなイリアスの現実逃避した言動が小さな救いだったりする。
夫亡き後も、夫のスーツを部屋中に広げて夫の存在を感じようとする母親の悲しみも痛い。

そしてイリアスが書く祖母への手紙の言葉ひとつひとつにイリアスの父親の死の現実から逃げようとする必死な思いが伝わって胸を打った。
この映画をみたひとは。
「アポロが月面着陸をした日、パパは死にました。」の言葉の意味に胸が熱くなるはず。

個人的には、母親役の女優の退廃的な美しさがとても印象的でした。
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