great兄やん

灰とダイヤモンドのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
4.7
【一言で言うと】
「“死”も積もれば“光”となる」

[あらすじ]
1945年5月。ドイツ軍降伏後のポーランドが、ソ連の支援する労働党に統治されるのをロンドン亡命政府は阻止しようとしていた。ロンドンの指令を受けた青年マチェクは、地区委員長暗殺を実行するが、誤って別人を殺害してしまう...。

抵抗三部作の三作目。ワイダ作品の中でも代表作と言っても良いほど有名な今作。

数日前に観た『地下水道』のような“絶望”の虚しさだけを植え付ける作品だと思っていたが、意外と微かな“希望”が垣間見える作品だったのがちょっと驚き😲
まぁハッピーエンドでないのは変わりないけど(ー ー;)...それでも政治的表現制限下の中でこういった暗喩に満ちた表現を成し得るワイダ監督の才能にはただただ凄いとしか言いようがない😌...

とにかく『地下水道』の時でもそうだが、映像表現としての“強烈さ”というのが本当に凄まじい。特に後半での逆さ吊りのキリスト像や終盤での劇的な死亡シーンなど、映像から滲み出る強烈な“表現力”というのが余りにも卓越すぎて、観ているこちらも一発で脳裏に焼き付いてしまうほど。
ストーリーよりも映像がバッチバチにキマった映画が好きな自分からしたらもう終始名場面でしかなかったですね🤤...

ストーリーとしては主人公マチェクが引き起こした“失敗”における大義の不信、そしてバーの女性に恋をするというマチェクの抱える“悩み”や“葛藤”を描いた展開ではあるが、そこでのマチェクを演じたズビグニェフ・ツィブルスキの演技がとても演技豊かな表現力でとても引き込まれてしまった。
彼自身“東欧のジェームズ・ディーン”と呼ばれ人気を博していたらしいが、若くして事故死したのだとか...やはりジェームズ・ディーンといい、真の才能を持つ者は夭逝する運命にあるものなのか😔...

とにかく愛と大義の苦悩に苛まれ、無念にも虚しく散る若者の姿に、やるせなさと共に先を見据える僅かな“光”を感じる一本でした。

『地下水道』と比べると詩的表現が多様に用いられており、かなり難解な作品へと仕上がっているのだが、だからこそなのかワイダ監督の果てしなく強烈なメッセージ性を感じてしまう今作。

圧巻にも等しきラストシーン然り、大義を胸に散っていった若者を観て何を思うのか...反政府蜂起への“嘲笑”、共産主義への“賞賛”、そんな惨憺たる“灰”にまみれた中でも、燦然たる“ダイヤモンド”に希望を寄せることが我々の“闘志”なのかもしれません...