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灰とダイヤモンドのkoyaのレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
4.5
モノクロの画面は逆光のシーンがとてもきれいに映るんだなぁ、ということを感じながら観ました。

背景となる部分の説明がないので、第二次世界大戦終結直後のポーランドードイツーロシアの関係を観た後調べて納得です。
日本は遠い極東の島国ですが、ポーランドなんて地続きでドイツや(当時の)ソビエトに挟まれている。
東欧の歴史も大変複雑なので、意外と日本には伝わる事が少ないのですが、ワルシャワ蜂起など、調べてから観た方がいいかもしれません。

しかし、描いているのはあるレジスタンスの青年、マチェクと同志で軍人のアンジェイが党権委員会書記のシュチューカを暗殺しようとして失敗する所から始まります。

映画は最初の10分が大事なのですが、この映画ものどかな風景の中で車を待つ2人から、間違えて労働者を撃ってしまった、肝心のシュチューカ暗殺は失敗までが、スピーディに描かれます。

それと同時に描かれるのは、シュチューカを狙って宿泊ホテルの隣の部屋に宿泊することに成功したマチェクが、ホテルのバーの美しい女性、クリスティーナに恋をする、そのいきさつです。

生きるか死ぬか、殺すか殺されるか、レジスタンス運動に身を投じた青年には幸せな恋愛などなく、それがわかっていても2人は恋に落ちる。

ホテルが中心となっていきますが、このホテルが当時は高級なんでしょうが、ものすごく埃っぽく描かれていて、かなりすさんだ様子が当時のポーランドを描いているようでした。

逆光のシーンが多いのとキリスト教会をさりげなく何度も映している所など奥が深い映画です。
多分、私などにはわからない深い事情もあるとはいえ、ヒリヒリとした刹那的な青年の横顔が時々、驚くほど美しかったりします。

映画は、映画館に行って金を払って、席につけば、映画が観客を楽しませてくれる、とは限らないのです。この映画はそういう映画。
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